【舛添直言】今度はイスラエルがイランを攻撃、「報復の応酬」はどこまでエスカレートするか
(舛添 要一:国際政治学者) イランとイスラエルの報復の応酬が始まった。 まず4月1日に、イスラエルが、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺を空爆、イランの革命防衛隊・コッズ部隊の司令官ら7人と民間人6人を殺害した。 【写真】4月15日、イランの首都テヘランで、イスラエルに対する報復を祝うイランの人々 これに対する報復として、イランは、4月13日から14日にかけて多数の無人機とミサイルを使ってイスラエルを攻撃した。 そして4月19日、詳細はまだ不明だが、今度はイスラエルがイランに対してミサイル攻撃を行ったと報じられている。 ■ 99%迎撃 イランによる13日から14日にかけてのイスラエルに対する攻撃は、無人機約170機、巡航ミサイル30発以上、弾道ミサイル120発以上を使ったものだった。イスラエル軍は、これを99%迎撃したと発表している。 迎撃には、アメリカ軍、イギリス軍、ヨルダン軍も参加した。また、サウジアラビアやUAEも情報提供に協力した。これらアラブ諸国は紛争の拡大を阻止するという目的のために動いたのである。 イランもまた、本格的にイスラエルと矛を交えることを望んではいない。イスラエルによる「イラン大使館」攻撃に対して、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「邪悪な政権は罰せられるであろう。罪を犯したことを後悔させる」と、報復を宣言していた。何もしないという選択肢は、国内的には成り立たなかった。 ただし、迎撃しやすいように、攻撃開始をすぐに発表した。ドローンは1000km以上離れたイスラエルに到達するのに数時間必要なので、迎撃の準備が十分に可能である。また、攻撃目標から人口密集地を外すといった配慮もしている。
当初イランは、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派など傘下の武装組織による攻撃を行うものと予想されていた。13日には、革命防衛隊がイスラエルに関連する貨物船をホルムズ海峡近くで拿捕している。 だが、翌日には、イランは、そのような間接的攻撃ではなく、直接イスラエル領土を攻撃するという挙に出た。そうしなければ、仲間であるヒズボラ、フーシ派、ハマスなどの「抵抗の枢軸」に対して、自らの影響力を行使できなくなるからである。イランがイスラエル攻撃を始めると、各地の親イラン武装組織も攻撃に参加した。 イランによる直接攻撃は、イラン、イスラエルに自制を求めてきた国際社会に大きな衝撃を与えた。西側諸国は、イランを厳しく批判した。 ■ イラン国民の不満 イランでは、イスラエルに対して十分な報復をしたという政府のプロパガンダが流されている。イラン国民は溜飲を下げ、目的を達したという充足感が漲っている。これで一件落着といった感じだ。イランの国連代表部は、「この件は決着した」と述べている。 イスラエルとの正面衝突は避けたいというのが、イラン指導部の本音である。年率4割というインフレ、通貨リアル安など経済情勢は悪化の一途を辿っている。それに伴って、今の政権に対する国民の不満も高まっている。食料やガソリンなどの必需品の買いだめに走る毎日である。