「私だけが恵まれていない」オーバードーズから抜け出せず苦しんだ40代女性の過去
ふとしたときに容姿や能力など、他人と比べて劣等感を感じて落ち込んでしまうことはないだろうか。小さい頃から「いつも私だけ」と感じ、そのやり場のない想いから、市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)を抜け出せず苦しんだ田上真美さん(仮名・40代)に話を聞いた。
親から「いつも笑っていなさい」
物心ついたときから優秀な兄に劣等感を感じてきた真美さんは、学力や運動神経だけでなく、自分の容姿にも自信がなかった。親から冗談のように「真美はかわいくないんだから、いつも笑っていなさい」と言われながら育ったこともひとつの原因ではないかと真美さん。 「年の離れた兄は東大も目指せるぐらい成績がよく、やさしかったです。容姿も私と比べれば、かなり整っている感じ。勉強を教えてもらった記憶はあってもいっしょに遊んだ記憶はなく、兄というよりは親がもうひとりいる感じでした」 両親からは、「お兄ちゃんと同じところを目指すのは無理。真美は自分の力で行けるところへ行けばいい」と言われ、「自分は期待されていないと感じるようになっていった」と話す。そして、何をやっていても全力で頑張れなくなっていったようだ。 「小学生とか中学生になったばかりのころは頑張っていた時期もあります。でも、私が何をやっても兄が残した成績や結果を抜くことはできません。そういうことも積み重なり、余計に他人と比べて『私だけが恵まれていない』と僻むようになっていきました」 そのような状況のなか、無難な高校を選んで進学。将来の夢や希望もなかった真美さんだったが、大学病院で顎関節症の手術をしたときに看護師に親切にしてもらったことから、医療機関で働きたいと考えるようになる。 「医療関係といっても医者は学力的に無理だし、看護師や介護職にも向いていないと考え、医療事務を目指すことにしました。病院に来た患者さんのカルテから、レセプトと呼ばれる診療報酬明細書などを作成する診療報酬請求事務。要は、裏で病院を支える存在です」