今までにない映像体験!映画好き、映画人、必修!『VORTEX ヴォルテックス』を観た!
【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
認知症の奥さんを抱えていて、自身も心臓病を患う老作家の夫婦の物語。 登場人物も、あとは息子と孫以外、殆ど出てきません。 非常に静かに進んでいく物語なのですが、映像の表現がエグい!! “必見”じゃなくて“必修”と題させて頂いたのは、その“工夫”が、半端ないから。 そして、それに伴う努力や計算を考えると、とんでもない発想と作業量で、これは「どうやって作ったか」を想像すると…畏怖! 恐ろしさすら覚える作品でした。 まずOPから「映画好きだと時空が歪む」演出があります。「あれ? 今観始めたんだよな?」と混乱させられたままストーリーが開始。 で、そこに映し出されるのが、本作のキモ、ほぼ正方形に切り取られた画面。 「いや、今時の映画は、横に横にスクリーン広がってるのに! 2分の1ぐらい無駄に使ってるよ!」というシーンから始まります。 「インスタみたいな“現代的な画角”を意識しているのか、ブラウン管時代の“レトロな映像”を意識しているのか」などと、疑いながら観始めると、ある場面でなんと、その正方形が、画面の左右2画面になって、スクリーンが埋まり、それを最後まで、ずーっと貫く!! スプリットスクリーンという技法だそうです。いわゆる“画面分割”って、流行りだしたのはアメリカの人気ドラマ「24」とか、最近だと深夜ドラマの少女漫画原作とかで「電話しているシーン」とかでスポット的に使われていることはよく見るようにはなっているのですが、この作品はずっと同じサイズで2画面。 基本的には夫婦それぞれをカメラが追っているイメージなのですが、2人が同席をすれば同じ場面がそれぞれの目線に寄り添った画になるし、全く別の場所で別のことをしている様なシーンも多々。「脳みそ、忙しいわ!」と、思いつつ“リアルタイムで夫婦の生活を追える”快感が、たまりませんでした。 作る側からすると、2画面の出来事というか、時間(このカットは何分とか)をシンクロさせるためにどれだけ準備と計算を行ったのか、撮影現場を想像すると背筋が凍ります。 ただ、それだけする価値のある傑作だったので、ぜひ皆様、劇場へ! 『VORTEX ヴォルテックス』 監督・脚本:ギャスパー・ノエ キャスト:ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ 配給:シンカ © 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA