【競馬】突然のダート参戦から衝撃を与えたクロフネ 芝GⅠ馬3頭のダートGⅠ挑戦を振り返る
ホクトベガの次はイシノサンデーが盛岡に来る!?
1996年は4歳ダート三冠(現3歳)が整備された年だった。その年の皐月賞馬イシノサンデーが盛岡競馬場のレースに参戦してくるとは夢にも思わなかった。春に「サンデーサイレンス四天王」とまで呼ばれた一頭が、目の前にいる。前月にはホクトベガが南部杯に参戦したばかりだったこともあり、中央と地方の交流が始まったことで凄いことが起きている。そういった胸の高まりを今も覚えている。 【チャンピオンズカップ2023 注目馬】海外を転戦し着実にレベルアップ、先行力武器にGⅠ制覇だ! SPAIA編集部の注目馬を紹介(SPAIA) 今年のチャンピオンズCには昨年の皐月賞馬ジオグリフやホープフルS勝ち馬ドゥラエレーデなど、芝のGⅠ勝ち馬が参戦する。過去にも芝のGⅠ勝ち馬がダートGⅠに挑戦することはあった。しかし、近年は芝路線の整備も進み、昔に比べ数は減少傾向だ。1986年以降で芝GⅠ勝ち馬のJRAダートGⅠ成績(馬の重複含む)は【5-2-3-27】勝率13.5%、連対率18.9%、複勝率27.0%。率としては高いわけではない。だからこそ、芝GⅠ勝ち馬がダートGⅠに挑戦し、勝ったときは多くのファンを魅了するのではないか。 そこで今回は、筆者が忘れられない「ダートGⅠに挑戦した芝GⅠ馬」3頭をレースとともに振り返ってみたい。
予想を上回る衝撃の勝ち方 クロフネ
2001年秋、この年の天皇賞(秋)の出走メンバーについて、競馬ファンは大いに議論した。あの世紀末覇王テイエムオペラオーに、3歳馬クロフネがどのようなレースをするか。そういった話題で盛り上がっていたからだ。 しかし、メイショウドトウとアグネスデジタルの2頭の外国産馬が天皇賞(秋)出走を決めたことで、賞金が足りなかったクロフネは除外された。これは、ルールなので当然のこと。とはいえ、あのときの激論は今でも忘れられない。クロフネは前年のラジオたんぱ杯3歳S(現在のホープフルS)でアグネスタキオン、ジャングルポケットに敗れたとはいえ、単勝1.4倍の1番人気に支持された。その後NHKマイルCでGⅠを制覇すると、日本ダービーでも5着に入った。 そのクロフネが天皇賞(秋)に出走できなかったことで選択したのが、初ダートとなる武蔵野Sだった。結果は9馬身差圧勝。東京ダート1600mで記録した走破タイムは1分33秒3。当時のJRAレコードを1秒2も更新したのだ。こうなると俄然、ダート王への期待が高まった。 次走は第2回ジャパンカップダート(GⅠ、現チャンピオンズC)に参戦。昨年の勝ち馬ウイングアローや、ダートの本場アメリカのGⅠ馬リドパレスなど豪華メンバーが揃っていた。しかし、ファンはクロフネを単勝1.7倍の1番人気に支持。どの馬が勝つか、よりクロフネがどのように勝つかに注目が集まっていた。 レースではやや後方の位置取りから進めることになってしまったが、武豊騎手が何もしていないのに2コーナーからスッと進出を開始。3コーナーではすでに3番手近くまで迫り、4コーナーでは馬なりで先頭に立った。直線で独走状態に入ると、2着ウイングアローに7馬身差の1.1秒差をつけ、JRAレコードを1秒3更新。2戦連続でJRAレコードを1秒以上更新するという離れ業をやってみせた。 ちなみにジャパンカップダート時代を含めた計23回のチャンピオンズCで、2着に1.0秒以上の差をつけたのは、クロフネと21年のテーオーケインズの2頭だけで、クロフネがつけた1.1秒は最大タイム差だ。