「読者に被害者になってもらうことで、当事者性を持たせたい」ネットホラーの寵児・梨が考える、この世で最も怖いと考える“恐怖の根源”とは?
当事者性をもってもらうために、読者を被害者にする
––––梨さんの作品の感想を読んでいると、ときどき「意地が悪い」と書かれていることがあります。 当事者性の問題でしょうか。当事者性を持ってもらえると、没入感を高められるので、それを狙って書くことがあります。書籍やネット記事という媒体の場合、その情報を読んだ、目にしたという当事者性はすぐ持たせられるのですが、それ以外にも何か当事者意識を持たせることはできないか。そう考えると、一つあるのは「被害者になってもらうこと」なんです。 ––––被害者、ですか。 知らず知らずに何かの片棒を担がされていたとか、呪いに加担してしまっていたとか、そういうことですね。あまり直接的にやると興ざめするので、バランスが難しいところでもあります。 ホラーの文脈において当事者性を持たされるのは、「嵌められた」とニアリーイコールだと言える。だから、「意地が悪い」という感想が出てくるのかな、と思いました。 ––––うまく嵌められた場合は意表を突かれる快感もあるので、「意地が悪い」は称賛の言葉かもしれませんね。最後に、ホラーに関係なく好きなジャンルの作品やエンターテインメントについてお聞かせください。 最初に思い浮かぶのは現代詩ですね。短歌なども好きで、先日木下龍也さんのサイン会に行きました。あとは、恋愛ものや青春群像劇が好きなんですよ。最近観た作品だと、『愛がなんだ』や『花束みたいな恋をした』、『君の名前で僕を呼んで』もすごくよかったです。 ––––すごく意外です……梨さんのホラー作品にはない、人間的な心が感じられます(笑)。 私はもともと同人作家として、ホラー以外の文章を書いていたんですよ。このままだとホラーの人になってしまいそうなので、最近は同人誌で歌集を出すなど、ホラー以外も書くことをアピールしています。ホラーももちろん書き続けますが、今後は別ジャンルの作家としての顔ももっと見せていきたいですね。 インタビュー・文/崎谷実穂