関西を拠点に活動した木下佳通代の回顧展開催 写真シリーズや抽象絵画など代表作が一堂に
神戸に生まれ、関西を拠点に活動した美術家・木下佳通代(きのしたかずよ/1939-1994)の回顧展が、10月12日(土)から2025年1月13日(月・祝)まで、北浦和にある埼玉県立近代美術館で開催される。没後30年を記念し、大阪中之島美術館から巡回してきた同展は、生前も含めて木下の初めての大規模な個展となる。 【全ての画像】《無題 A》ほか広報用画像(全7枚) 京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で絵画を学んだ木下は在学中から作家活動を開始し、1960年代には、神戸で結成された前衛美術集団・グループ〈位〉と行動をともにする。ごく初期から「存在」ということについて思索を重ねていた木下は、1970年代には、写真作品の制作に着手。複数の写真を並置した組作品や、幾何学図形を写した写真の上から線を描き重ねるといった手法によって、視覚と認識、存在と事物の関係性を鮮やかに表現した。「存在」や「見ること」について問いかける一連の作品は、同時代のコンセプチュアルアートの世界的潮流とも呼応し、ヨーロッパで高く評価されたことから、1981年にはドイツで個展も開催している。再び油彩に軸足を移した1980年代には、問題意識をより発展させて、度々作風を変化させながらも、画面上に緊張感の漂う空間を生み出す制作を精力的に続けた。だが、病により、1994年に55歳で亡くなっている。 同展は、様々な作風の作品を通して「存在とは何か」という問いに向き合い続けた木下の全貌に、約120点の作品を通じて迫るもの。これまで公開される機会の少なかった初期の油彩画をはじめ、代表作の写真シリーズや、後年に取り組んだ抽象絵画、そして亡くなる前に病床で描かれた絶筆まで、厳選した作品群によってその足跡を辿るとともに、映像作品やプラン・ドローイング、マケット、記録写真などの関連資料も多数展示し、木下の制作の背景や思考のプロセスにも注目するという。 近年、国内外の展覧会でたびたび紹介されて再評価が高まるなか、日本の美術館では初の個展となる同展は、木下の歩みを再検証する重要な試みだ。豊富な図版と資料、研究者による論考とともに作家インタビューの再録なども収めた、決定版ともいうべき展覧会図録も用意されている。 <開催概要> 『没後30年 木下佳通代』 会期:10月12日(土)~2025年1月13日(月・祝) ※会期中展示替えあり 会場:埼玉県立近代美術館