4番降格の阪神・大山が意地のサヨナラ逆転3ランも「遅すぎた決断」を巡って賛否
矢野監督は、ようやく「奪い取ってほしい」との方針を口にした。しかし、なぜ、その考えを最初から貫かなかったのだろうか。チーム内には、「4番打者として育てるには、プレッシャーのある4番で使わないと意味がない。我慢して当然」と主張する声もあった。 だが、それは育成ありきの話で、ファンは球団が選手を育成するのを見るためにお金を払っているわけではない。勝利を見に来ているのだ。勝負と育成の両立は永遠の命題だが、そこにチーム内競争の原則が取っ払われてしまうとチーム力は間違いなく落ちる。 とにかく大山のバッティングの内容が酷かった。 ファーストストライクから振りにいってバットの根っこや先っぽに当たる。何を狙っているかもあやふやで狙ったボールを一発で仕留めるスキルも足りない。相手バッテリーとの駆け引きがないため、4番として目に見えない無形のダメージを与えることができなかった。 阪神打線で相手バッテリーに気を使わせているのは、1番の近本か、好調時の梅野くらいで肝心の4番が神経戦で相手を消耗させることができなかったから打線が線にならなかったのも無理はない。 それを4番の存在感とか品格と表現するのかもしれないが、大山には欠けていた。チームの打撃不振を脱するには、真っ先に、そういう相手バッテリーを苦しめる打者をうまく配備することが必要だったが、矢野監督は「4番・大山」にこだわり続けてきた。 前巨人監督の高橋由伸氏は、昨年、岡本を4番として起用し続けて、ひとつの形を作ったが、3割、30本、100打点をクリアしたから我慢できただけの話。決して「打てない4番」を起用し続けたわけではない。原監督は、今季開幕4番を岡本でスタートしたが、打撃不振に陥ると、54試合目となる6月4日の交流戦の楽天戦で、あっさりと4番から降格させて6番で使った。その後、4番に復帰させたが、7月27日の阪神戦からは、また4試合、4番は坂本でいくなど流動的な起用をしている。勝利最優先の原則から導き出された結論だったのだろう。 そう考えると巨人より下の順位にいる阪神の大山の4番降格が、106試合目だったのは、確かに遅過ぎた。 阪神のOBの中からは、「大山を楽に打たせてやる処置は、もっと早くに決断すべきだった。でも逆にここまで我慢したのなら最後まで貫き通すべきで、すべてにおいて中途半端だ」という厳しい意見も聞かれる。 紆余曲折はあったが、“4番・大山”という“聖域”を無くして「ポジションは自分で奪い取れ!」というチーム方針が明らかになったのは朗報だろう。後は、事実上、2つのエラーで傷口を広げたソラーテの守備をどうするかが、当面解決しなければならない問題となる。今さらスキルはアップできないのだから、守備位置の指示など、ベンチが予防策を細かく練るしかないのだろうが……。