レッドリヴェールがダービーに挑戦する理由
3歳馬の頂点を決める競馬の祭典・日本ダービーが6月1日、東京競馬場で行われる。2011年に生産されたサラブレッドは7123頭。その中で、ダービーの舞台に立つことができるのはわずか18頭だ。81回目を迎える歴史に新たな1ページを刻むのはどの馬か、注目が集まる。 今年は傑出馬が不在で混戦模様。牡馬クラシックの1冠目・皐月賞を制したイスラボニータを筆頭に、好メンバーがそろったが、その中で興味深いのは、昨年の2歳女王レッドリヴェールの参戦だ。牝馬のダービー挑戦は7年ぶり。3歳牝馬は桜花賞~オークス~秋華賞を歩むのが既定路線だが、陣営は桜花賞2着後、オークスではなく、あえて強豪牡馬が集うダービーを選択した。その意図とは?競馬界では各方面で賛否両論となっている。 間違いなく、陣営に影響を与えたのは、07年に歴史的な勝利を飾った女傑・ウオッカの存在だろう。1943年のクリフジ以来、史上3頭目となる牝馬によるダービー制覇の快挙は、競馬界に大きな衝撃を与えた。能力があれば牝馬でも頂点に立てるー。64年という長きに渡る封印が解かれた瞬間、牝馬のチャレンジは無謀なことではなくなった。2歳女王の称号を得たリヴェールには、日本一を目指す価値が十分にあると陣営が判断したのだろう。 また、今年の勢力図も挑戦する後押しとなったはずだ。現3歳世代は牝馬が強く、ウオッカが制した07年に似た雰囲気がある。分かりやすい例が、昨年の新潟2歳S。のちの皐月賞馬イスラボニータを3馬身ちぎって勝ったのが、のちの桜花賞馬ハープスターだった。リヴェールはハープとの直接対決で1勝1敗と五分だが、前走の桜花賞ではハープに惜敗している。桜花賞後、先にハープがオークス出走を表明したことで、陣営はより勝てる可能性が高いダービーを選択したのではないか。 だが、7年ぶりとなる今回のチャレンジ。ウオッカとリヴェールでは背景に大きな違いがある。ウオッカがオーナーブリーダー(個人馬主)の所有馬であったのに対して、リヴェールは大手の社台ファーム生産馬だ。ダービーには同じく社台グループ生産の牡馬(イスラボニータ、トーセンスターダム、トゥザワールド、ワールドインパクト、ベルキャニオン他)が多数参戦する。種牡馬選定の意味合いもあるダービーに牝馬、それも勝てる可能性が高い牝馬を送り込むメリットがあるのだろうか。もしも勝つようなことがあれば、種牡馬としての価値に大きな影響が出ることは避けられない。 それでもゴーサインが出たのは、リヴェール陣営に今秋、世界最高峰のレース・凱旋門賞挑戦のプランがあるからだろう。急速な進歩を遂げた日本競馬もいまだに届かぬ頂ー。国内最強を誇ったディープインパクトやオルフェーヴルでさえも、世界の厚い壁を破ることができなかった。日本のホースマンは今、「誰が一番先に凱旋門賞を獲るか」に躍起になっている。