久石 譲 メン・オブ・ザ・イヤー・レジェンダリー・ミュージシャン賞──世界を巡りながら、至高の音楽を追求する
久石譲は、クラシック音楽の最高峰レコードレーベル「ドイツ・グラモフォン」と2023年に契約。映画音楽を通じて人々を魅了してきた、作曲、指揮者、ピアニストとしてのこれまでの功績を讃える。 【写真を見る】久石譲、貴重な演奏シーンをチェック!
10月末、久石譲は東京・紀尾井町のホールでコンサートを行った。彼の真骨頂とも言えるミニマル・ミュージックのコンサート「MUSIC FUTURE」だ。指揮者の久石は、Tシャツに黒いジャケット、足元はスニーカーというスタイルで、満員の観客の前に小走りで登場。まるでダンスをするかのように全身を揺らし、実に楽しげにタクトを揮っていた。 「楽しいですよ、実際。舞台に出た時に指揮者の自分が楽しんでいないと、演奏者は楽しめない。自分が音を楽しみ、演奏者が僕の姿を見て安心して演奏すると、観客も楽しめる。楽しくないコンサートなんてやる意味ないでしょ」 見た目も言葉も、そして音楽も実に若々しい。 「目の前にやらなきゃならないことが山積みになっているから、年を取っている暇がない(笑)。作曲をし、演奏をし、さらに世界トップのオーケストラを相手に指揮する。3人分働いているようなものですから、体力と技術をつけるために自分を鍛える日々です」 JOE HISAISHIの名は、世界に轟いている。2023年だけでも、1月ヘルシンキ、3月ウィーン、7月ワシントン、8月ロサンゼルス、9月ロンドンと渡り歩き、各都市のトップオーケストラを指揮してきた。もちろん、その合間に日本国内でのコンサートにも多数出演している。 「ありがたいことに、どのコンサートもソールドアウト。楽しくやらせてもらいました。大変なこともあります。ウィーン交響楽団は王道すぎるくらいにクラシカルなオーケストラであり、僕みたいなミニマル・ミュージックの作曲家とは正反対の音楽性が特徴です。その証拠に、初日のリハーサルが終わった時には、あまりに合わないので『もう無理。日本に帰りたい』と思ったほどで(笑)。でも彼らは、自発的にうまくいかない理由を考え、理解し、学習してくるんです。本番3日前にはびっくりするほど上達していました。一般的なオーケストラは僕の音楽に合わせ過ぎるのか、ミニマル・ミュージックがどこか機械的になりがちなのですが、ウィーン交響楽団はクラシックらしい歌うような演奏をするので、抜群にスケール感が出る。新しく、面白い演奏になったと思います」