NHKスペシャル、子どもを狙う盗撮の実態と社会の闇を直撃取材
子どもを性対象とする盗撮などの犯罪実態と社会の闇に迫るドキュメンタリーが8日と15日の2週にわたり、いずれも午後10時からNHKスペシャルで放送される。子どもたちの顔写真や実名をさらし、盗撮した動画を投稿し合うSNSのコミュニティーなどに直撃取材。無数にある性犯罪集団や犯罪予備軍の現実に迫った内容が、社会に警鐘を鳴らしそうだ。 注目のNスペは「子どもを狙う盗撮・児童ポルノの闇」と題し、取材班が18歳未満の女子高生ら子どもたちを盗撮するSNSのコミュニティーに潜入。弁護士の助言を受けて取材の立場を明かさず、30代既婚者の会社員や20代フリーターと名乗るメンバーと直接会い、仲間たちとつながることで行為がエスカレートしてしまう本音を隠しカメラの映像で引き出した。 また、教え子の女子児童12人の下着を盗撮し撮影罪や児童ポルノ禁止法などで有罪判決を受けた大手学習塾、四谷大塚の元講師と、数カ月間にわたり手紙でやり取り。元講師が同じ小児性愛者のコミュニティーとネットでつながる中で、生徒たちを盗撮対象にしていった心の軌跡もあぶり出した。 他にも、ネット上の加害者だけでなく、被害者、子どもへの性犯罪を食い止めようと尽力するボランティアグループ、社会福祉士などを幅広く取材。女児への強制わいせつ罪で服役している男性は取材に対し「より弱い立場の人間を征服したい思いがあった」などと告白した。 さらに、高校生のときに知り合った男に全裸写真をネット上で拡散されたことが数年後、妊娠中に婚約者の知るところとなった女性も登場。結婚が破談になった後、今では1児を育てながら、こうした性犯罪撲滅に力を貸しつつ、再び個人情報を流布される危機感も明かした。 番組では、SNSの性犯罪コミュニティーのつながりが、加害者の罪悪感を失わせ、行為をエスカレートさせていると指摘。子どもを性的に見ることを許容している社会にも問題があるとして、15日放送の後編では児童ポルノを売買するアプリやプラットフォーム企業などビジネスの闇にも迫る。合わせて、子どもたちを守るために、法律や制度をどう変えるべきかも探るという。 同局では5年前に公式サイト「性暴力を考える」を立ち上げ、被害者の声を集めてきた。今回の番組を企画したチーフプロデューサー、植松由登氏はサンケイスポーツの取材に「『子どもの頃に受けた性被害に今も苦しんでいる』という声も少なくない。被害に遭ってから何十年たっても『つらい』『苦しい』という方々が数多くいらっしゃる」と現状を指摘した。
その上で「SNSの発達に伴い、子どもたちへの性的搾取が深刻化し、連日のように子どもが性被害に遭う事件が報じられている。子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する日本版DBS法案が成立に向かうなど、社会的関心も高まっている。そんな中で、まだ社会に十分に知られていない盗撮や児童ポルノの実態を伝えるべきだと考えました」と制作意図を語った。