KinKi Kids「2人でステージに立っていること、今この光景が全て」ファンと紡いだ奇跡のひととき<東京ドーム公演リポート>
約3年ぶり、通算17枚目となるアルバム『P album』を12月13日にリリースしたばかりのKinKi Kidsが、「KinKi Kids Concert 2023-2024 Promise Place」ツアーの東京ドーム公演を12月16、17日に開催。アルバムタイトルにかけて“Promise Place(ファンのみんなとの約束の場所)”と題されたツアーの東京公演2日目の様子をリポートする。<※以下、公演の詳細に触れています> 【動画】KinKi Kids × King & Princeのコラボ曲「シンデレラ・クリスマス」 ■アメ車に乗ってゴージャスなオープニング 客電が落ち、金のライトに縁どられたステージがきらびやかに浮かび上がると、聞こえてきたのは車のエンジン音。待ちきれない観客が思い思いの手拍子を打つ中、4台のアメ車がステージ中央からクラクションを鳴らしながら飛び出した! 続く純白のオープンカーには堂本光一が、ダークグリーンのもう一台には堂本剛が乗り、ニューシングル「シュレーディンガー」のイントロにあわせてリズムをとりながら車ごとアリーナエリアへ。大歓声が響く中、2人は大きく手を振り、アリーナを走行して周りながら、「Secret Code」を含む疾走感あふれるナンバーを熱唱。のっけから飛ばしまくりのオープニングに、場内は一気にヒートアップする。 車を停めてアリーナ後方のBステージに降り立つと、まずは光一が「オープニングからぶち上がってくれてますね。ありがとうございます!」、剛もしみじみと「ありがとうございます」と1年ぶりのファンとの再会を喜び、この日最初のMCへ。 車好きの光一が、「剛くん、買っちゃいなよ、この車」と勧めると、「すごい好きやな、僕にモノを買わすのが。違うねんて。カッコええのって、『剛くんさ、これあげるから乗りなよ』でしょ?」と剛。負けずに光一が「あげちゃだめなの。買った方がいいって。アメ車好きじゃん」と食い下がるも、「いや、アメ車好きやからって『あ、いいなぁ』って(ばっと)買わないですよ、そんな白菜みたいに」と軽いジョークでいなし、軽妙なトークを展開。それらのアメ車の値段が「全部合わせて大体3億円ぐらい」(光一)という裏話から、お金の話でひとしきり盛り上がった後、エッジの効いたギター音が印象的な「X-Day」をはじめとする最新アルバムの楽曲を続々と披露した。 ■ファンとの距離が近いMC 次なるMCではアルバムの話題に。「私まだアルバム買ってないって方、いらっしゃいますか?」という光一の問いかけを受けて、お客さんの手がチラホラ挙がると、ドスのきいた声で「オイッ!(怒)」とすごむ光一。「時代、時代」となだめる剛に、「時代な」と納得したそぶりを見せつつ「もう一回訊きます」→「(チラホラ)」→「オイッ!!(怒)」→「(お客さん爆笑)」を三度繰り返し、三度目には、光一の反応をもっと見ようと「はーい!!」と元気いっぱいに手を挙げるファンが続出するという、まるでコントのようなやりとりを観客と繰り広げる一幕も。こうした遊びも、ファンとの距離が極めて近いKinKiのライブならではだ。 冬のライブの定番「シンデレラ・クリスマス」では、2020年のクリスマス限定配信ライブ「X’mas with KinKi Kids gift selection 2020」で披露した「フラワー」で共演した高校野球の強豪・花咲徳栄高等学校 吹奏楽部のOB・OG&現役生と3年ぶりに共演。2020年は、新型コロナの感染拡大で夏の甲子園大会が中止になった年。球場で演奏するはずだった吹奏楽部も活躍の場を失ったことを知ったKinKiの2人が、当時高校生だった彼らと交流を重ね、配信ライブでの共演が実現したのだが、子どもたちを励ますつもりが、逆に10代の若い魂が持つ生命力に感銘を受け、大きな力をもらったという経緯がある。この日は、大舞台に立ち緊張気味の若者たちの心をトークと柔和な笑顔で終始ほぐしながら、すっかり“優しいお兄さん”の顔つきでロマンティックな曲を歌う心温まる共演となった。 ■King&Princeとのコラボ話で見せる後輩思いな一面 歌前のトークでは、このライブの2日前に、King & Princeとのコラボで「シンデレラ・クリスマス」をYouTubeで公開したことにも言及。光一が「この前、キンプリちゃんのチャンネルにお邪魔して『シンデレラ・クリスマス』を歌いましたけど。KinKi KidsとKing & Princeをかけて“King Kids”という(ユニット名で)ね」と振ると、「めちゃくちゃ無理やりつけましたね」と剛。この曲のリリースは1998年で、「彼ら生まれてないんだって」と光一が言うと、剛は「おっそろしい話やね…」とつぶやき、客席でも同意を示す笑いが起きた。そうした何気ないやりとりにも、CDデビュー27年目に入った二人が重ねてきた年月の重みや、世代を超えて愛されるKinKi Kidsの楽曲の魅力を改めて感じたファンは多いのではないだろうか。 つれないようで実は後輩思いの彼らが、後輩の話題に触れた場面はもう一つある。KinKiがこれまでリリースした楽曲は全部で360曲以上あり、その中で冬の曲と夏の曲の割合が気になった光一が、歌詞を見ながら数えてみたという話から、光一が「昔はよく夏の曲歌ったなぁとか」と振り返ったときのこと。剛が「『夏の王様』とかね、我々があんまり歌わない曲ですけども。キーが高すぎて。河合(郁人)だけがちゃんと歌ってるんです(笑)」と言うと、光一が「あれはもうアイツにあげよう!」と言い、剛も思わず吹き出しながら「うん(笑)、いいよ、あげるよ」と同意。この瞬間、拍手と笑いでドッ!と湧いたファンの脳裏には、KinKi Kidsをこよなくリスペクトし、その歌を熱唱する河合のけなげな姿が浮かんでいたに違いない。 ■「この曲知ってるかい?」企画コーナー また、KinKiは曲数が多いだけに、タイトルを聞いてもすぐにはメロディーを思い出せない楽曲もあるだろうという発想からYouTubeで行われた「この曲知ってるかい?」企画の続編コーナーも。日替わりで出されたこの日のお題は、『K album』(2011年)に収録の「さよならのエトランゼ」。なんとか思い出そうとするものの、歌詞をもらい、メロディーが演奏されてもなお思い出せず、「うわ、大事故や」(光一)、「昨日(は)出てきたのにな…全然出てきぃひん」(剛)と、正解にたどり着けないまま歌い終えた2人。本人たちのショックは見た目以上だったようで、次の曲にまつわるMCの最中も、「もうエトランゼが…エトランゼダメージすごくない?」(光一)、「いや、すごいよ」(剛)と引きずっていた。2024年1月1、2日の京セラドーム大阪公演の同コーナーでの健闘を祈りたい。 ■幻想的で華麗なパフォーマンス サービス精神旺盛なKinKiのトーク部分を多く紹介したが、歌に入った時の2人の華麗さ、カッコよさは言うまでもない。ちょっとワルっぽいムードの剛の歌い出しがめちゃくちゃセクシーな「シュレーディンガー」は大人の魅力にあふれていたし、メンバーカラーをあしらった衣装に着替え、一面の雪景色の中で歌った「銀色 暗号」や、「もう君以外愛せない」では2人のユニゾンの美しさに酔いしれた。光一が「我々の代表曲と言っていいのかな」と語った「愛のかたまり」は、紫のレーザーが空間を走り、地球を連想させるいくつもの天体がきらめく幻想的なムードの中で歌われた。 12月27日にリリースされる「シュレーディンガー」のカップリング曲で、剛が作詞を手掛けた「世界中をI LOVE YOU」では、曲を披露する前に製作秘話をたっぷりと語った。「受け取った曲がキラキラしてたから、思いっきりアイドルっぽい歌詞をつけた」と話す剛。ダンサーの振り付けや衣装も、「“令和昭和ポップ”みたいな感じにしたくて」(剛)トータルでプロデュースし、ギリギリを攻めたという。 さらに客席には「I LOVE YOU~のところ、LOVEの“L”を作りましょう」(剛)と、親指と人差し指でLをつくって頭上に上げて見せ、「やだ、恥ずかしい~そういうの」と嫌がるポーズの光一を尻目に、「いきましょう、それは。やっぱもう、みんなで共有する振り付けも欲しいじゃない」(剛)と言って、時代を逆行したようで実は新しいナンバーを披露。「まだ世に放たれてない曲」(光一)でのKinKiとの思いがけない共演は、ファンにとって最高にうれしいプレゼントになったと思う。 ■クライマックスでは2人の溢れる思いが クライマックスの「全部抱きしめて」では、2人がワンフレーズ歌うごとに、ファンが合いの手を入れるように、「光ちゃん!」「つよし~!」と息の合った声援を送り、サビでは声をそろえての大合唱。いつもながらKinKiとファンのあうんの呼吸はバッチリだ。トロッコでアリーナエリアを周りながら歌った「Amazing Love」は、2人の歌声が神々しさを帯びて巨大なドームに響きわたり、まさに圧巻の一言だった。 最後にマイクを握った光一は、「我々としましては、こうしてまた今年もこのドームのステージに立てることを本当にうれしく思っております。今、ちょっと不安に思うこともある日々かとも思いますけども、こうやって2人でステージに立っていること、今この光景が全てだと思ってください。先なんて分からないこと、たくさんありますけどね、今までもそうやってやってきたと思いますし、これからも皆さんとの時間を1ページ1ページまた刻めたらいいなというふうに思っております」とあいさつ。 その言葉を聞きながら、何か尊いものを見つめるようなまなざしで客席を見渡していた剛は、「本当に皆さんと、こうして、一緒にいれる時間を、どうすればつなぐことができるのか、本当に毎日一生懸命考えてます。そして、強い気持ちの中で…」とこみあげる涙を抑えるようにいったん背を見せて向き直り、「…皆さんと一緒に、美しい未来にいけたらなと思ってます」と心からの言葉をつないだ。 度肝を抜かれたド派手なオープニングから、ジャンルレスな音楽に酔いしれ、ユーモアに笑い、迎えた神々しいラストまで、KinKiとともに過ごした夢のような時間をかみしめながら、今2人のその言葉を真っすぐに信じられる。そんなライブだった。 ◆取材・文=浜野雪江