朝ドラ『虎に翼』34歳俳優が“横顔ばかり”なワケ。「日本屈指の美形」の魅力が引き出される瞬間に注目
『虎に翼』(NHK総合)の主人公・佐田寅子の開心術はすごい。最初は単なる変わり者にしか見えなかった星航一(岡田将生)が、今や笑顔の人になっている。 【画像】距離が近くなってきた寅子と航一 それにしても笑顔の人になってからの航一は横顔ばかり写る。それはなぜだろう? イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、横顔ばかり写る理由を考える。
看板メニューのハヤシライス
「お二人ともいつものでいいのかしら」 佐田寅子(伊藤沙莉)にとっては、明律大学女子部時代から一緒に法律を学んだ学友。最高裁判所初代長官・星朋彦(平田満)の息子で、今は新潟地方裁判所の判事である星航一にとっては、なじみの喫茶店の店主。 男爵家出身の桜川涼子(桜井ユキ)は、戦後、新潟の地で元お付きの玉(羽瀬川なぎ)とともに喫茶店ライトハウスを営んでいる。街の人々から愛されるこの店に、常連客の航一が寅子を連れてくる。寅子と涼子が再会したのが、第17週第81回。 それからというもの、寅子と航一にとって憩いの場所になる。毎週通ってくれる二人に対して涼子が、看板メニューである「いつもの」ハヤシライスを提供する。それを嬉しそうに待っている航一の表情が毎回見逃せない。
見切れるくらいぎりぎりの航一
広くはない店内だが、寅子と航一には定席がある。調理場の様子が見え、涼子と玉と楽しく会話できるカウンター席。カウンター内から見て、右手に航一、左手に寅子が決まって座る。 基本は寅子と涼子が女子部時代のようにおしゃべり。航一は黙っている。カウンター内から運ばれてくるハヤシライスを見て、航一はただただ嬉しそうに微笑む。 第81回、ハヤシライスを初めて食べる場面では、画面上手の航一が見切れるくらいぎりぎりで写り込んでしまったかのように捉えられている。その後の喫茶店場面でも、航一は寅子の横で見切れそうになることが多い。
横顔ばかり写る理由
なんでちゃんと航一の顔全体を写してあげないんだろう? カウンター内から航一の顔正面を捉えても、すぐに横を向く。なかなか顔正面が写らず、カメラは彼の横顔ばかり意図的に捉えているように見える。気づけば、この場面も横顔、あの場面も横顔という具合に。 その理由はたぶん、寅子と出会って以来、航一がどんどん心を開いていく素直な変化を捉えるためだと思う。あんなに取り付く島がない人物像だった彼が、第16週第79回以降、優しく微笑むようになった。 第18週第87回では、猪爪家の元女中・稲(田中真弓)がライトハウスの手伝いに入り、カウンター内で寅子の女学生時代についての昔話を繰り広げる。 「昔からお優しいお嬢さんでしたから、知らないうちに人に寄り添ってしまうというか、相手もどんどん心が近付いてしまうというか」と話す稲に対して、カウンター席で傾聴していた航一が「なるほど」と発する。 自分の心の変化をはっきり認識した瞬間だが、ここでも航一の顔が正面から短く写されたあとにすぐ横顔が写ることで、表情の陰影が強調されている。