睡眠を考える──「寝てない自慢のショートスリーパーは要注意! 医師がこぞって通う睡眠駆け込み寺とは?」
ショートスリーパー(短時間睡眠者)を公言する人のほとんどが実は睡眠不足だった?「睡眠の質の改善」に早くから注目してきた医学博士で、睡眠に特化したクリニックを運営する田中俊一氏に訊いた。 【写真を見る】睡眠クリニックの施設をチェック!
寝る前に水を飲んではダメ?
「睡眠の質を向上」とうたう飲料や食品が増え、メディアでも頻繁に特集が組まれるなど、睡眠への関心が年々高まっている。 睡眠の質を科学的に診断する「スリープラボ」や、ポッド型の非日常空間で脳を休める「瞑想ポッド」、-120℃以下で急速冷却し、睡眠の質や筋肉の疲労回復をサポートする冷却療法「クライオバス」など、「よい眠り」を追求しているのが、パーソナルウェルネスクリニック丸の内だ。 こちらは食事療法、運動療法に加えて「睡眠の質の改善」に早くから注目し、睡眠時無呼吸症候群の診断・治療に取り組んだ数少ない医療法人が運営するクリニックで、科学的に睡眠を診断してくれるという。今回、体験取材する機会に恵まれた。 問診票に記入後、脳波や呼吸、酸素飽和度などを記録する機器を、頭部や顔に装着。痛みや不快感などはない。検査の所要時間は約90分。N1(浅睡眠)、N2(浅睡眠)、N3(深睡眠)、レム睡眠の4つの基準値で評価される。 事前に予約した14時頃、4畳ほどの広さの個室に通され、真っ暗な部屋でベッドに横たわると、あっという間に眠りに落ちる。 約80分が経過して目が覚める。浅い睡眠のN1が48%、N2が52%、深い睡眠であるN3とレム睡眠はゼロ、という結果が出た。 「睡眠の深度はN1、N2、N3と下がって、その後N2、N1と戻ってレム睡眠になるのですが、これを一晩にだいたい5サイクル繰り返します。N3が一番いい睡眠という基準になります。今回はN1とN2が大半で、あまり深い睡眠ではなかったですけれど、睡眠時無呼吸はないですね。血液中の酸素濃度の最低値も96.6%あるので、正常です。『眠りは浅かった』、という結果になります。寝付くまでの『入眠潜時』は2分。わりと寝つきはいいほうですね」 医学博士で、同クリニックを運営する「医療法人みなとみらい」の田中俊一理事長は、診察結果を見ながら、筆者がここ数カ月自覚していた眠りの浅さをズバリと指摘する。 ──最近、夜中に目が覚めることが続いて気になっています。睡眠が浅いということなのでしょうか。 「何時頃起きますか?」 ──入眠3時間後くらいに一度目が覚めます。 「人間の睡眠は、普通3時間くらいで一度浅くなります。その時にいろいろな刺激があると、目が覚めてしまうんです。まず、寝る前に水を飲んではダメです」 ──『就寝中もコップ1杯分の汗をかくので、寝る前に水を1杯飲みましょう』という専門家の意見をよく見かけますが。 「胃の中にものを入れるのは寝る3時間前までと言いますが、『寝る前に水を飲みましょう』というのは言葉足らず。正しくは、寝る3時間前までに水を飲む、です。普通に寝ると、1時間半から3時間くらいまでの間に血中成長ホルモン濃度がピークになります。睡眠深度はN1、N2、N3と下がっていきますが、N3に下がった時に成長ホルモンがピークに。睡眠深度と逆のリズムになる訳です。成長ホルモンがピークになったところで、臓器の再生が起こる。胃の細胞が入れ替わる時に胃の中にものが入っていると、胃が稼働してしまうので細胞が入れ替われなくなってしまう。胃が空っぽになるまで3時間くらいかかるので、とにかく寝る3時間前は胃に何も入れないことです」 近年の猛暑で、「熱中症予防のため、寝る前に水を1杯飲みましょう」とあちこちで耳にしていたこともあり、季節問わず毎晩寝る前に水を飲むのが習慣になっていたが、「寝る前」を「ベッドに入る直前」と解釈している人も多いのではないだろうか。「たった水1杯」が胃の刺激となり、眠りの質の低下につながるとは思いもしなかった。