夜の路上に横たわる少年 普段はタフだが、グル―の吸いすぎで完全ハイ状態
ネパールの首都カトマンズにあるダルバール広場。古いチベット仏教建造物の並ぶこの一角は、人気の観光名所でもある。2009年、僕が初めてストリート・チルドレンと遭遇したのがこの広場だった。 ◇ ◇ まるで酒に酔い潰れたサラリーマンの如く、へべれけになって夜の路上に横たわる少年の姿があった。ビッピンドラだ。グルー(接着ボンド)を吸いすぎて、完全にハイの状態。よだれを垂らしながら、目が回って立ち上がることもできないようだった。 ダルバール・ボーイズの中でも小柄で、本人は15歳だと言っていたが、どう見ても12~13歳にしか見えない。だいたいストリート・チルドレンの多くは、出生証明など持っていないから、本当の歳を知ることは難しい。
小さな体に似合わずタフで喧嘩っ早く、年長の連中からちょっかいを出されても決して臆せず立ち向かう負けず嫌い。運動神経も抜群で、サマーソルト(バク転しながら相手を蹴る)など朝飯前でさらりとやってのけた。 身体中に生傷の絶えない、ハードコアなストリート・チャイルドの典型だったピッピンドラだが、時折見せる笑顔には屈託がなく、無垢な少年のような可愛さも併せ持っていた。 この夜、グルーをしこたま吸い続けた彼は、商店街の灯りが消える頃、仲間とともに店先にうずくまった。折り重なるように体を寄せて横たわる彼らを後に、僕は宿へと向かって歩き出した。 (2010年5月/2012年8月撮影) ※この記事はフォトジャーナル<ネパールのストリートチルドレン>- 高橋邦典 第50回」の一部を抜粋したものです。