「英国のシンドラー」を演じたアンソニー・ホプキンス…監督が語った、猟奇殺人犯「レクター博士」とは「180度違う演技」
『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』が公開中だ。映画の主要な舞台は、第二次世界大戦がはじまる直前のチェコ・プラハ。現地では、ナチスから逃れてきたユダヤ人難民たちがあとを絶たなかったが、一方でその救援活動は追いついておらず、難民たちは十分な住居や食糧もない生活を余儀なくされていた。その窮状を見たイギリス人のニコラス・ウィントンは、子どもたちをイギリスに避難させようと仲間たちと組織を立ち上げ、里親探しと資金集めに奔走する。計669人の子どもたちを亡命に成功させたニコラスたちだったが、ついにドイツがポーランドに侵攻し、活動は中断される。それから50年。ニコラスは老境を迎えても、救出できなかった子どもたちのことを忘れられずにいた。しかし、そんな彼にテレビ番組「ザッツ・ライフ!」の収録に参加してほしいとの依頼が入る。そこでスタジオを訪れた、ニコラスを待ち受けていたものは――。 【写真】刺激が強すぎるケンダル・ジェンナーの「ほぼ裸」ファッション 「英国のシンドラー」とも呼ばれ、今も世界中からの尊敬を集めるニコラス・ウィントン。一介の株の仲買人であったニコラスが、どのようにして多くの子どもたちを救出できたのか。ニコラスの娘・バーバラの著書を原作とする本作は、長期のリサーチを重ね、事実を再現することを重視したという。本作がデビュー作となる、ジェームズ・ホーズ監督に話を聞いた。(通訳=大倉美子)
ホーズ監督初の長編映画
――『ONE LIFE』はホーズ監督の長編映画デビュー作となります。『英国王のスピーチ』(トム・フーパー、2010)のプロデュースでも知られる、プロデューサーのエミール・シャーマンさんとイアン・カニングさんが主導で企画を進められたとのことですが、ホーズ監督が本作にコミットされた経緯を教えていただけますか。 私はこれまで、テレビ番組でキャリアを築いてきて、最近ではApple TVの「窓際のスパイ」で、オープニングシーズンの監督を務めました。手がけたなかではヒット作もそれなりにありますし、また作品の質の高さにも自負を持ってはいたのですが、しかし、映画を作りたいという思いはどこかにありました。 とはいえ、一時期は自分は映画を作ることはないのかなと諦めそうになっていましたが、今回イアンさんに声をかけてもらったことが大きな転機となりました。彼とは10年以上前に出会い、その頃から何か映画の企画があれば一緒にやりたいという話はしていたのですが、イアンさんとエミールさんの中で『ONE LIFE』の企画が浮上し、映画の実現に向けて動こうとしたタイミングで、私にお呼ばれがかかったんですね。これまで私が手掛けてきた作品は、基本的には実話をベースにした作品が多かったので、題材がマッチしたことも大きかったと思います。 ――これまで、ニコラス・ウィントンという人物についてはご存じでしたか。 ニコラスさんについては、YouTubeで「ザッツ・ライフ!」の映像を見たことがあるくらいで、彼の人生の内実をそこまで詳しくは知りませんでした。ただ、私が映像業界に入ってから2番目に入った会社は、「ザッツ・ライフ!」の制作とも関係がありましたので、そういう意味での縁はあったかもしれません(笑)。 ニコラスさんのリサーチを進める中で感じたのは、彼が非常に謙虚で、自分を飾らない人間だったということです。たとえば、実際に「ザッツ・ライフ!」の収録でニコラスさんを送迎した運転手の方に話を聞くことができたのですが、彼の証言からもそれを感じました。帰りに「本当に素敵でしたね、どんな気持ちでしたか」と聞いたら、「ぎこちない気分になったね」と答えただけだったのだと。たくさんの人がテレビを見て感動したにもかかわらず、自分ではあくまでも最低限のコメントに留めることに、その飾らない人柄を感じました。