高齢者への配慮がない…さいたま市のケアハウス廃止方針、入所者が撤回求め要望書 署名集める利用者家族も
男性によると、妻は3年前ごろから、認知症の症状が出て、要介護3と認定された。2人暮らしで、男性が介護を続けている。妻は夜中に起き、トイレにこもってトイレットペーパーを大量に使うこともあるという。男性自身が体調を悪化させ、「随分苦労して、にっちもさっちもいかなくなった」と振り返った。22年5月ごろから、きんもくせいを利用し、現在は週4日のデイサービス、月5日ほどのショートステイをしている。 「施設の人は優しく熱心で、水が合った。穏やかに生活できる」と安心した矢先、今年3月2日の説明会で廃止方針を知らされた。民間参入や施設の老朽化が理由と言われても納得はできない。金銭面や立地のほかに、当事者の慣れている場所が非常に重要という。男性は説明会直後から、廃止反対の署名活動を始め、千筆を既に超えた。 夫妻はいずれも元教員で、結婚して47年ほど。妻はとにかく働き者だったという。認知症になってから、男性が寝ている間に食洗機にトイレットペーパーが入っていたことがあった。「役に立ちたいと思っているのかな」
男性は妻とできるだけ一緒にいようと、高齢者施設への入所を避けてきた。症状が進み、子や孫の顔は分からないという。「分かるのは俺だけになった。妻はうちが好きでね。きんもくせいのサービスを利用し、自分で面倒を見たい。大事に大事に時間を過ごしたい」。男性はささやかな願いを口にした。