どうなるGPファイナル 羽生の4連覇に死角はあるのか
しかし、シニアデビューとなった昨年、いきなりGPファイナルで3位に入った宇野には、すでに2度成功させた4回転フリップという武器がある。羽生も4回転ループという新技に挑戦しているが、基礎点はループの12.00に対して、フリップは12.30と難易度が高い。 宇野自身も、「4回転フリップには助けられている」と、新たな武器に信頼を寄せる。スケート・アメリカで優勝、ロシア杯では2位につけて2年連続のGPファイナル出場権を得たが、そのロシア杯でマークした総得点285.07点は、今季の点数で言えば羽生のNHK杯の301.47点、フェルナンデスのフランス杯での292.98点に次ぐ世界3位の数字。「ノーミスで演技すれば戦えない内容じゃない。実力で去年の3位以上を狙う」と、羽生超えを誓った。具体的にはショートで100点、フリーで200点超えを狙うという。 「宇野選手の今シーズンの成長ぶりには目をみはるものがあります。シニア2年目でありながら4回転フリップに挑戦し、演技構成点、表現力も大きく伸びています。ジャンプの安定感も宇野選手の強さの理由でしょう。ミスをしないので、平均点が高いのです」とは、中庭さんの宇野評だ。 それでも中庭さんは、今回のGPファイナルの展望の最終結論をこう結んだ。 「フェルナンデス選手、宇野選手ら、誰もがノーミスで滑ったとすればどうなるのか。羽生選手に勝てる選手はいません。今年から取り入れた4回転ループに加えて、ステップ、スピンなどの細かいスケーティングのレベル、そして表現力に磨きがかかり、いつでも世界最高記録を弾き出す条件が整っています。特にシーズン開幕からNHK杯、GPファイナルと、調子の波をうまくコントロールしてきました。NHK杯の前にしっかりと滑り込み、コンディショニングをGPファイナルに合わせてきたように思えます。 4回転時代は、練習の段階から疲労度が増しますので、いかにいい状態を保つかがポイントになります。来年の平昌五輪もそうです。五輪はシーズンの最後にくるわけですから、そこまでのコンディショニングの作り方が重要で、今回のファイナルも開催地がフランスですから、時差なども含めてアジアの選手には不利な条件です。しかし羽生選手は、それらも含めてうまく調整しています。経験を上手く生かしてプラスに転じさせていますね」 羽生は複数のメディアに対して、「自分を信じて、周囲を信じて、自分のやれることをしっかりとやれば、おのずと道が開ける」と、敵は自分にあることを明らかにした。会場の柔らかい氷は、4回転ループなどのエッジ系ジャンプには不利だと言われているが、羽生の対応力は他のスケーターの追随を許さない。羽生の偉業達成に死角はみつかりそうにない。