星風まどか

アンドリュー・ロイド＝ウェバーの壮麗でドラマティックな楽曲で知られる、ミュージカル界の金字塔『オペラ座の怪人』。“その10年後の物語”としてロイド＝ウェバーが再び音楽と脚本を手掛け、世に放ったのが本作『ラブ・ネバー・ダイ』だ。日本版は2014年に初演、その衝撃的なストーリーがたちまち話題を呼び、2019年には再演も果たした。 ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』ビジュアル 三度目の上演となる今回は、ファントムに市村正親、石丸幹二、橋本さとし（トリプルキャスト）、クリスティーヌには平原綾香、笹本玲奈、真彩希帆（同）という日本ミュージカル界を代表する俳優陣が集結。加えて、元・宝塚歌劇団花組トップ娘役で、5月に退団後、女優として始動したばかりの星風まどかも、キーパーソンとなるメグ・ジリー役で出演する。星風の“今”の心境を聞いた。 物語は、パリ・オペラ座から逃れたファントムがニューヨークに渡り、ファンタズマ（見世物小屋）の経営者として成功したところから始まる。星風が演じるメグは、母のマダム・ジリーと共にファントムを支え、自身もショーの主役として舞台に立っている役どころ。 「出演が決まった時は、そうそうたるキャストの皆さんとご一緒することに緊張で震えたのですが、今は『この貴重なチャンスを無駄にしたくない』と改めて身が引き締まる思いです。お稽古が始まってもしばらくは圧倒されっぱなしだと思うのですが、メグは重要なお役ですので、そこは臆せずしっかりと務めたいです」と星風は語る。 メグ・ジリーという女性については、「ファントムが手掛ける（ファンタズマでの）ステージを真ん中で担えるぐらいの女性だと思うので、そういう妖艶さも身につけられたら」と星風。宝塚ではヒロイン役を多く演じてきた彼女だが、本作では新たな表情が見られそうだ。「男女の愛や家族愛、言葉では言い表せない愛など、さまざまな愛の形が描かれているのがこの作品の魅力。メグの人生も壮絶で、私の今の“引き出し”では補えないと思うほど難しい役なのですが……。物語の後半でクローズアップされる彼女の気持ち、それをかき立てたものは何だったのかを、台本を読み込んで考えたいです」と意気込む。 さらには、アンドリュー・ロイド＝ウェバーの楽曲を歌うことも、Wキャストでの出演も初めてという星風。「ロイド＝ウェバーさんのドラマティックな楽曲を通してメグの気持ちを伝えられるように、今は歌のレッスンに取り組んでいます。稽古場ではWキャストの小南満佑子さんのお稽古を見させていただいたり、演出の方とお話ししたりしながら、役づくりを進められれば。緊張も不安もありますが、今は失敗を怖れずに体当たりの気持ちで」と表情を引き締める。 一方、劇中のショーのシーンでは、華やかな存在感と歌声に定評のある星風ならではのステージングが期待できそうだ。「宝塚ではいろいろなレビューの場面をやらせていただいたので、そうやって積み重ねてきたものは活かしつつ。さらに幅を広げてステップアップできたらいいな」と話した。 また、クリスティーヌ役の1人である真彩希帆は、星風の2期上。同時期にそれぞれトップ娘役を務めていた仲でもある。「在団中はいつも気にかけていただき、家にお邪魔して食事をご一緒させていただいたこともあります。共演が決まった時は心強さと共に、単純に『うれしい！』という気持ちになって、よろしくお願いしますとご連絡しました（笑）。私は宝塚を退団したばかりなので、真彩さんにたくさんアドバイスをお聞きしていきたいです」と星風は笑顔を見せた。 退団後はイタリア旅行に出かけるなど、心身ともにリフレッシュして充電期間を楽しんだ。「コロナ禍もあり、海外旅行自体が7年ぶりでした。イタリアではのんびり、のびのびと過ごしながら、『世界って広いんだなぁ』と感じて。今は舞台をたくさん観たり、平凡なんですけどカフェでランチをしたり。こんなに1日って長いんだなと実感しています」と話す。「退団公演の千秋楽の翌日ってどんな感情になるのだろうと思っていたんですが、実際にそうなってみると、抜け殻というより、やり切ったという気持ちのほうが大きかったです。これからは宝塚で過ごした時間を大切にしつつ、また皆さまの力をお借りしながら、さらに新しい自分を見つけていけたら」と目を輝かせた。 最後に、公演が始まったら楽屋に何を持って行きたいかと聞くと、「退団する時にファンの皆さんからプレゼントしていただいた、美顔スチーマーです！ 舞台メイクの強い味方になりそうですし、皆さんの温かい気持ちを感じながら緊張をほぐしたいです」と再び笑顔になった。 取材・文／藤野さくら ＜公演情報＞ ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』 公演期間：2025年1月17日(金)～2月24日(月・休) ★ぴあ貸切公演：2025年2月9日(日) 17:30 会場：日生劇場