【日本にとっての悪夢も】韓国・尹大統領の弾劾訴追案に示された韓国人の日本観、メディアが報じぬ非常戒厳宣布の動機とは?
北朝鮮スパイの関与
最初に紹介するのは、野党・共に民主党の支持基盤の労働組合が起こした「民主労総スパイ事件」だ。2023年1月、国家情報院と警察は韓国最大規模の労組「全国民主労働組合総連盟」(民主労総)の幹部ら4人を逮捕し、一審で組織争議局長に懲役15年などの有罪判決が出された。 局長らは、北朝鮮の指令を受けて労組活動を口実にスパイ活動を行い、中国やカンボジアなどで北朝鮮の工作員と接触していた。国情院が押収した北朝鮮からの指示書は90件におよび、歴代スパイ事件で最多となった。 北朝鮮の工作機関「文化交流局」を「本社」、民主労総の地下組織を「支社」、局長を「支社長」と暗号名で呼びあい、金正恩総書記に触れるさいは「総会長」としていた。本社と支社の秘密連絡には、画像に情報を埋め込むステガノグラフィーを使ったり、無関係のYouTubeのコメント欄を利用したりしたことが明らかになっている。 では、北朝鮮からの指示は、どのようなものだったのだろうか。22年の梨泰院ハロウィン事故に際しては、尹大統領退陣を求めるロウソク集会などを指示し、「これが国か」「退陣が追悼だ」など具体的なスローガンも指定。実際、民主労総が主催した追悼集会でこのスローガンが使われた。 そのほか、「大統領府などへの送電網を調査し、電力遮断の方法を検討」「米軍基地や液化天然ガス(LNG)貯蔵施設、火力発電所など重要インフラの情報収集「米韓同盟破棄の機運を高めるため、尹大統領自宅の連続包囲行動」なども指示していた。 改めて指摘するが、北朝鮮のスパイだった者は、野党の支持基盤で中核を担う組織争議局長などだった。 次に紹介するのは、韓国憲政史上初めて、国会に議席を持つ政党が解散させられた「統合進歩党内乱扇動事件」だ。同党の李石基議員(当時)は13年、「(北朝鮮の)主体思想を指導理念に南朝鮮を変革する」を掲げた地下組織「RO(Revolution Organization)」を党内に建設し、国家転覆を企てた内乱罪・内乱謀議罪で逮捕され、懲役9年の判決を受けた。 李石基はROに対して、石油貯蔵所や火薬工場、通信基地など主要基幹施設の破壊、銃器確保、爆弾製造などを指示し、「即刻戦闘態勢に入るよう準備しなければならない。総攻撃命令が出れば瞬時に攻撃しろ」と指示した。 また、国民の最大の関心事であったBSE(牛海綿状脳症)問題で李明博政権に責任を転嫁する宣伝を展開し、同時に米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)に対する情報収集を行っていた。 この事件を引き金として、韓国政府が違憲政党解散審判請求を憲法裁判所に提出し、同裁判所は上述のとおり憲政史上初の政党解散を命じた。このとき統合進歩党の共同代表、李正姫議員は頻繁に日本を訪問し、朝鮮総聯関係者と接触していた。