2024年ベストを確定するために駆け込みで観たい3作。
『不思議の国のシドニ』 エリーズ・ジラール(監)
デビュー作の邦訳版が再販されたのを機に、京都に招かれたフランス人作家のシドニをめぐる、仏映画版ロスト・イン・トランスレーション。寡黙な編集者の溝口健三と親密な時間を過ごすなか、彼女は亡くなった夫の亡霊と出会うが……。外国人監督的ないかにもな日本描写はさておき、溝口健三という名前から想起せざるをえない溝口健二的な幽霊(実際、劇中では彼に対して「有名な監督の子孫?」みたいなやりとりがある)、鈴木清順的な過剰な桜 、黒沢清的な車中スクリーンプロセスなどなど、随所に日本映画へのオマージュを感じさせつつ、しっとりと落とすその手腕には息をのんだ。12月13日より公開。 12月はこんな映画を観ようかな。
『クラブゼロ』 ジェシカ・ハウスナー(監)
富裕層の子息が通う名門校に赴任してきた栄養学のノヴァク先生が、生徒に教えるのは「意識的な食事」。要するに、より少なく食べるための食事法だ。資本主義からの脱却や環境問題の改善にもつながると笑顔で説く彼女に、たちまち魅了された生徒たちは、彼女が提唱するより過激な食事法を実践するに至るが……。厄介なのは、ノヴァク先生が、社会問題への高い意識を持つ若者の心につけ込んで、金を稼ごうとする悪徳カルト教祖ではないってこと。実際、彼女自身が誰よりその思想を信じ抜いているんだから。これぞ、現代社会の陰画。12月6日より公開。
『A Nonsense Christmas with Sabrina Carpenter』 サム・レンチ(監)
ここ数年、クリスマスはNetflix作品を観るのが習慣になっている人も多いんではないか。今年はこれ、年々その存在感を増すポップスター、サブリナ・カーペンターによる、楽しくて楽しいクリスマススペシャルだ。彼女自身のホリデーEP「フルーツケーキ」の楽曲を披露する他、さまざまなクリスマスソングの名曲をカバーするなか、様々なカメオゲストも出演するらしいから、ソフィア・コッポラ監督による『ビル・マーレイ・クリスマス』の再来を期待したい。12月7日よりNetflixで独占配信。 text: Keisuke Kagiwada
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