人は驚くほど空気温の変化に敏感、1℃未満の差でも気づくと判明、エアコン設定温度とは別
私たちがとるべき行動
パリン氏は、気温が一定のしきい値を超えると、健康リスクが高まっていくことが、科学文献で明らかになっていると指摘する。「つまり、気温が上昇するなかで快適さを保つには、使うエネルギーをますます増やしていく必要があるかもしれません」 パリン氏は、温度の変化に対する人間の敏感さをより深く理解することが、空調システムの技術進歩につながると考えている。居住者の快適なレベルに合わせて、アルゴリズムで設定を最適化する空調システムだ。この知識を活用すれば、わずかな温度変化も感知できる高精度センサーの開発をもたらし、最終的には家庭の冷暖房の効率化につながる。 一方、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の気候科学者ダニエル・スウェイン氏は、この研究に関心を示しながらも、気候変動がもたらす影響のうち、人体への影響こそが最悪だとはとても言えないと指摘する。 気候変動の真の課題は、相互に結びついた地球のシステム全体に関わるものだ。ハリケーン、熱波といった異常気象の増加からサンゴ礁、北極の氷など生態系の変化まで、気候変動はすでに私たちの世界を変えている。最悪の影響を回避するには、再生可能エネルギー源への移行、大規模な森林再生プロジェクト、持続可能な農業など、包括的な対策が必要だ。 最新の研究によって、人間はその変化を敏感に感じ取ることがわかった。しかし、私たちが果たして行動を起こすのかどうかが、今、問われている。
文=Avery Schuyler Nunn/訳=米井香織