2022年のカタールW杯以来の代表復帰が決まった長友佑都（写真◎佐藤景）

14日、北中米W杯2次予選、北朝鮮戦（ホーム＆アウェー）に臨む日本代表のメンバーが発表された。注目はFC東京のDF長友佑都。2022年のカタールW杯以来、選出された37歳のサイドバックは練習後に取材に応じ、代表の誇りと重みを伝える役割を買って出るとともに、北朝鮮の厳しい試合に臨むチームを引き締めたいと語った。 【動画】長友佑都、最新試合◎FC東京vs神戸ハイライト

5度目のW杯出場へ険しい道をゆく

「まだ全然、叶ってないですよ」 　代表復帰を目標として口に出してきた長友は、メディアに「願い続ければ叶うんですね」と言葉をかけられると、きっぱり言い切った。 「まだ通過点でもあるし。選ばれたから、そこの土俵に立てるというのは大事なことですけど、そもそもこれから厳しい戦いが始まる。それは、代表に残っていかなきゃいけないし、チームに貢献しなきゃいけない。そしてポジションの競争もあるっていうところで、非常に自分の中では危機感がすごく動いてきて、戦いが始まるなという思いでいます」 　今回の招集は、左サイドバックの中山雄太が負傷で招集できないことでチャンスが巡ってきたと言えるだろう。ただ、当の長友はピンポイントの参加で満足するつもりはない。日本代表としては前人未到となる5度目のワールドカップ出場をその先にしっかりと見据えている。だから今回の招集はあくまで通過点であり、再びスタートラインに立ったにすぎないというわけだ。 「（招集を聞いての感想は？）来たかと。コンディションももちろん良かったですし、アジアカップとかも、自分だったらどうしていたとか、そういったことを考えながら見ていました。また雰囲気も含めて、自分の経験を必ず伝えられるんじゃないかという気持ちは常にあったので『来たか』っていう思いでした。楽しみな思いがあります」 　気負いもない。その口調は落ち着いていた。静かな闘志を胸に秘めていると表現すべきか。 　優勝候補と目されていた1月のアジアカップにおいて、日本はベスト8で敗退した。長友はチームの戦いぶりについて「中にいたわけではないないから分からない」と断ったうえで、こう印象を語っている。 「もちろん僕自身も1年以上、ワールドカップ以降離れていたんで、若い選手たちがどういう気持ちで、どういう雰囲気なのかはわからないですけど、ただ15年間代表にいた身としては、日の丸を背負うこと重みというものは、誰よりも知ってるんじゃないかなと。みんなが海外のすごいクラブだったり、そういったところでプレーしてるから自信とかいろんなものがあるんだろうけど、代表はまた別物なんで。そこはまた、そういう代表の思いとか、重圧を背負うことの大切さみたいなね、そういったものは自分の姿勢とか、そういうもので示していけたらと思いますね」 　アジアカップの敗戦理由の一つとして「熱量」を挙げたのはDFの冨安健洋だった。選手たちが決して気持ちが入ってなかったわけではないだろうが、それ以前のチームのように、代表に懸ける強い思いや「熱」を感じられたかと言えば、そうではなかった。 　 　チームがリスタートを切るこのタイミングで、誰よりも代表の重みを知る長友が復帰するのは必然だったのかもしれない。しかも、対戦する相手は国交のない北朝鮮。21日にホームで、26日には11年ぶりに平壌でアウェーゲームを戦うことが正式に決まった。平壌では、過去4戦未勝だ。 「アジアのレベルも上がってますし、そもそも北朝鮮にアウェーで勝っていない。雰囲気づくりから本当に厳しい雰囲気で練習に取り組んでいかないと足元すくわれると思うんですよね。雰囲気というものは、代表ずっといると結構わかるところがあって、今日はみんな気合が入ってるなというときと、ちょっと何か抜けている部分があるというときは大体、足元をすくわれてきたんで。みんなヨーロッパの舞台で戦っていて、アジアなんかは普通にやれば余裕で勝てるような、そういうちょっとしたスキがあると勝利は難しいと思うので。そういう本当の厳しさとかは、僕が痛いほど経験してきている部分があるんで、そういったところを後輩たちに伝えたりとか、あとは自分が姿勢でやっぱりみせることをやっていきたいと思います」 　予選に、アジア勢との戦いに、簡単な試合は一つもない。気を引き締める必要性を、長友は強調した。 「（チームの）空気が悪ければ、僕が空気清浄機のように空気を入れ替えていくんで。一家に1台必要でしょうと。なんで、悪かったりとかちょっと違和感を感じれば、僕が吸い取ってきれいな空気に変えていきたい」 　チームが好転するイメージを、すでに膨らませている。 「ここに来て、やっと一つの扉が開けたというか。ここから勝負が始まるぞと思っています。ここからまた2年、険しい道が、すごくいろんな高い壁が途中で出てくるし、難しい状況になることもあると思いますけど、信じたら絶対そこにたどり着くっていうことを証明したい」 　37歳にして代表に対する思いをますます強める長友佑都。新鮮な空気を吹き込むとともに、日の丸の重みを伝える存在として期待される。 取材◎佐藤 景