杏、日本とフランスの二拠点生活の先に見据える自身のキャリア 「これからが本当の試練」
「いつか国際的な作品にもぜひ出演してみたい」
ーー千紗子と拓未という関係に加えて、千紗子と父・孝蔵(奥田瑛二)の関係も並行して描かれていますが、そこには高齢化社会や介護など、現代の日本が抱えている社会問題も反映されています。 杏:映画の中でも描かれているように、認定が下りなかったり、下りるとしてもものすごく時間がかかったり、いろんな問題が日本にはありますよね。今はたまたま、私や私の周りの人は直面していませんが、他人事ではないと感じます。虚しさや悔しさも含めて、いろんな感情が押し寄せてくる映画だと思います。 ーー杏さんが現在暮らしているフランスと比較するとどうですか? 杏:もちろんフランスにも同じような問題がたくさんあって。習慣や制度は国によって違いますが、やっぱりどこの国でもまだまだ難しいのかなと思います。ただ、日本での出来事のほうが、馴染みがある分、悔しい思いをしたり、やるせない気持ちにはなることが多いです。 ーーフランスでの生活はどうですか? 映画文化も豊かですが……。 杏:フランスでも日本映画が定期的に上映されているんです。この前はちょうど妻夫木聡さんの『ある男』が上映されていました。『鬼滅の刃』もやっていましたね。これは映画に限らずですけど、フランスには、日本という国に対するリスペクトや親しみが思っていた以上にあるなと感じます。それこそ『かくしごと』がいつかフランスで上映できると嬉しいですね。どういう反応になるのかとても気になります。 ーー杏さんのキャリアで言うと、2023年は『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~』『キングダム 運命の炎』『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』と大作への出演が続いていました。今後は日本とフランスの二拠点生活をしながらどういうキャリアを歩んでいこうと考えていますか? 杏:去年の出演作品の公開ラッシュは本当にたまたまで。移住前に撮影したものが一気に公開されていったので、これからが本当の試練という感じなんですよね。フランスに住みながらどうやってお芝居をしていくかは私自身の大きなテーマで。でもきっと、いろんな出会いがあるのではないかと期待しています。子どもの成長具合だったり家庭の環境も鑑みながら、いつか国際的な作品にもぜひ出演してみたいなと思います。 ーー家庭と仕事を両立させる上で、大事にしていることやポリシーがあれば教えてください。 杏:最近は1人で抱え込まずに、人に頼ることを意識するようになりました。あとは無理なときは無理せずに、はっきり「無理」と言うことですね。自分1人で抱え込むことによって、結果的に他の人に迷惑をかけてしまったら本末転倒なので、そうならないためにも、周りの助けを借りながら、自分の気持ちを優先させることを大事にしています。
宮川翔