Ken Yokoyama、新たなチャレンジを経て研ぎ澄まされたバンドサウンド「『20周年記念盤』と言っても良い完成度」
4人組ロックバンド・Ken Yokoyamaが31日、通算8枚目となるフルアルバム『Indian Burn』をリリースした。本作には、20周年の幕開けにふさわしい渾身の12曲が収められた。 【写真】最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」をかき鳴らす横山健 バンドは、2021年5月以来となるアルバムの制作を明言しながら、昨年5月8日から「Better Left Unsaid」「My One Wish」「These Magic Words」という3作のシングルを発表し、バンド初の“シングルシリーズ”を展開。さらに、初の日比谷野外大音楽堂公演や初のホールツアーも実施し、様々な“初の試み”を形にした。 リリース方式をはじめ、多くのチャレンジを繰り返した2023年。彼らは、その集大成とも言える本作にどんな思いとサウンドを注ぎ込んだのだろうか。その真相に迫るべく、今回は横山健(Gt&Vo)と松本“EKKUN”英二(Dr)に登場してもらった。
■長期間におよぶ制作&レコーディングで研ぎ澄まされたアルバムのビジョン
――前回のインタビュー(シングル「These Magic Words」発表時)では、「アルバムに先駆けたシングルシリーズは、3作まとめてレコーディングした」と語っていましたが、アルバムの制作はいつ頃、どのように進められていたんですか? 【横山】前回話した通り、もともとアルバムに向けて曲を作っていた中で、いろいろと思うところがあってシングルシリーズにシフトしたんです。だから、シングルの曲がそろった段階でもうアルバム用の曲もいくつかはできていたんですよ。シングルのリード曲を2月、それ以外の曲を6月に録ったんですけど、3月から5月の間もまだ曲を書き足していました。シングルとアルバムで制作時期を分けずに、全部一緒に進行させていった感じでしたね。結局、シングルとアルバムで17曲作ったのかな。自分で自分の首を絞める作業量になりました(笑)。 ――長期間かつ濃い制作だったと思いますが、だからこそ生まれてきたアイデアなどもありましたか? 【横山】良かったのは、チャレンジ的な曲や変化球っぽい曲をシングルのカップリングに入れ込めたことですね。その結果、焦点が絞れたアルバムになったなと。例えば、レゲエ調の「Whatcha Gonna Do」(「Better Left Unsaid」収録)とかがアルバムに入っていたら、全然違う印象になっていた気がするんです。ただ、曲のかわいさはどれも一緒。仕上がりは違うかもしれないですけど、1曲1曲に持てるものを全部注ぎ込んだので、差はありません。 ――制作中で特に印象に残っているエピソードやメンバー間でのやり取りはありましたか? 【横山】うーん…なにかあったかな? 【EKKUN】やっぱりツネさん(恒岡章/Hi-STANDARD)じゃないですか? 【横山】あぁ、そっか。「Better Left Unsaid」のギターソロを録る日に、ツネの訃報が入ったんです。夕方くらいに聞いたのかな。それから2~3時間はいろいろなところに電話をしたり、ぼーっとする時間があったりして。メンバーは「もう今日はやめよう」って進言してくれたんですけど、「いや、やる」って録ったソロがあのリードフレーズなんです。だから、ステージで弾くと未だにちょっとツネの顔が浮かびます。しかも、録ったテイクにはもう…ヤケクソみたいなビブラートが入っていて(笑)。聴くたびにあのときのテンション感がパッケージされているんだなって思いますね。あのビブラート、ライブじゃできないですもん。 ■多種多様なビートとフィルで魅せるドラム 苦戦の末に見出した新境地 ――ドラムで印象深い曲はありますか? 【EKKUN】「A Little Bit Of Your Love」ですね。この曲は、なかなかやることが定まらなくて苦労しましたし、ちゃんと形にできたのも結構ギリギリでした。 ――ビート自体は比較的オーソドックスなものですが、フロアタムを使ったパターン系のフレーズも登場しますね。 【EKKUN】まさに、そこの引き出しが僕の中で少なかったというか。こういう曲調のバンドやジャンル自体も好きで聴いていたはずなんですけどね…(笑)。 ――今回のアルバムではさまざまなジャンルを感じさせるビートが登場しますが、「A Little Bit Of Your Love」のようなパターン系やフィルインの方が苦戦するんでしょうか? 【EKKUN】特にフィルは時間をかけて考えるし、ミドルテンポの曲であればあるほどバリエーションを出すのに結構苦労しますね。 【横山】でも、俺はEKKUNってフィルが得意なドラマーだと思っているよ。BPMが速い曲のフィルはもうバッチリだし。ただ、例えば「ここはフロアで攻めよう」とか「こういう雰囲気にしよう」っていうのは、もうバンドアレンジになってくるから、ドラマー1人じゃ決められない部分があるんですよ。ベースにししろギターにしろ、それぞれが勝手に考えるわけじゃなくて、相関性の話、作曲の領域なんですよね。 ――健さんは、作曲者として具体的なリクエストを伝えるんですか? 【横山】曲を作った時点で浮かんだイメージは結構細かく伝えますけど、セッションでアレンジを練っている最中はもう完全にスピード勝負なので。「そこにシンバルを入れて、ここから8ビートに変えて」みたいに、その場でリクエストしていきます。で、間違えると「なぜ一発でできないんだ!」みたいな(笑)。そうやってバンドらしい殺伐とした空気も生まれていくっていう(笑)。