【新垣結衣さん】俳優として約20年のキャリアを経て思うこと。「人間は多面的。いろんな“らしさ”があっていい」
不完全な自分も、なりたい自分も。 すべてが「私」 “新垣結衣 自分らしさの見つけ方”
柔らかな笑顔の裏には、さまざまな経験や乗り越えてきた葛藤がある。主演映画『違国日記』にも通じる、優しくて寛容で健やかなマインドとは──。時に正座をしながら真剣に紡いでくれた、自分らしさについての言葉たち。 【写真】新垣結衣さん
川の流れに身を任せていたら穏やかな流れにたどり着いた
俳優としてのキャリアは約20年。デビューしたのは、今作の中の姪と同じ15歳。早瀬さん演じる朝の姿を通して当時のことを振り返り、「多感ってまさにあの時期のこと」と、懐かしそうに笑う。 「環境が大きく変わったことが楽しい反面、すごく怖かったことも覚えています。私自身は俳優を志したことはなくて、周りの大人に勧められるまま、目の前のことに必死で取り組んでいたらここにたどり着いた感じ。10代から嫌でも仕事の責任を感じていたから、周囲に迷惑をかけないために本当の気持ちを押し殺したこともありました。でも年齢や経験を重ね、少しずつ自分の意思を大切にできる瞬間が増えてきた気がします。川の流れに時に抗いながらも身を任せていたら、穏やかな流れに出た感じ。これまでの選択に間違いはなかった。というか、誰の人生にも間違いなんてないんじゃないかな」 新たにできるようになったことは他にも。 「職業柄、昔からサポートしてもらうことが圧倒的に多かったけど、大人になったことでこちらから感謝を返す機会が増えた気がしてすごく嬉しいんです。『こういう時にお花を贈るのか』など、まだまだ知らないことばかり。世間知らずのまま大人になってしまったので、そのやり方も勉強中ですけどね」
人間は多面的。いろんな“らしさ”があっていい
明るい、穏やか、どこまでも軽やかで自然体……。私たちがイメージする“新垣結衣像”は、見る人の数だけ無限にあるけれど、本人は「そのどれもが私らしさの一部だと思う」と語る。 「自分自身がこうありたいと思う私らしさと、私のことを知ってくださる方が思う新垣結衣らしさが一緒かどうかはわかりません。けれど誰かから言われた言葉によって『自分はこういう人間なんだ』と新たに気づくこともありますよね。人は多面的だから、いろんな“らしさ”があっていいと思うんです。そして、それが明日変わっても明後日変わっても1年後に変わってもいい。『今日はこういうメイクをしたい』とか『この服を着てみよう』みたいな気持ちが、きっと自分らしさを作っていくと思います」 一般的に自分らしさは、無駄を削ぎ落としたあとに残るシンプルなものと思われがちだけど……。 「メイクで例えるとナチュラルメイクと捉えられることが多いですよね。でも私はそうじゃなくても全然いいと思うんです。たとえば、しっかりメイクをすることで人の目を見ることができたり、堂々としていられる人もいるわけですから。なりたいと思う自分が、その人らしさなんだと思います」 自身が考える自分像は、「リラックスしていたい人」。その肩の力の抜け方がなんともチャーミング。 「昔からすごく緊張しやすかったり、物事をネガティブに考えすぎてしまうタイプなんです。だから仕事をする時も、服を選ぶ時も、常にリラックスできるかが自分らしさを保つ基準に。緊張する場面では、リラックスのためにあえて違うことを考えてみたり、好きな香りを嗅いだりすることもあります。でもやっぱり、ふざけることが一番かな(笑)。楽しいことが大好きだし、力みすぎていない時のほうがすごく調子がいいんです」 特にリラックスできる大好きな時間は、夜寝る前のベッドの中。 「1日のやるべきことを全部終えて、あとは寝るだけ!って瞬間が最高に幸せ。ベッドの上でよくするストレッチも、私にとって大切な時間。面倒くさい時は無理にやらないけれど、すごく疲れているなって時ほど、ストレッチをしたほうが心も体もリラックスできるし、自分らしさをキープできる気がしています」 ●俳優 新垣結衣 1988年6月11日生まれ、沖縄県出身。モデルを経て2005年にドラマ『Sh15uya』で俳優デビュー。近年の主な出演作は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』、『風間公親-教場0-』、映画『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』、『GHOSTBOOK おばけずかん』、『正欲』など。 ●映画『違国日記』 ©2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会 少女小説家の槙生(新垣結衣)はある日、交通事故で両親を亡くした15歳の姪、朝(早瀬憩)を勢いで引き取ることに。ほぼ初対面の二人の奇妙な共同生活が始まるものの、人見知りで不器用な槙生と、人懐っこくて素直な朝の性格は正反対。初めて見る風変わりな大人である叔母に戸惑いながらも、朝は持ち前の天真爛漫さで、槙生の心を動かしていく。ヤマシタトモコの同名コミックを、瀬田なつき監督が映画化。 MAQUIA 7月号 撮影/酒井貴生〈aosora〉 ヘア&メイク/藤尾明日香 スタイリスト/渡邊 薫 取材・文/松山 梢 企画/火箱奈央(MAQUIA) シャツ¥44000、メッシュドレス¥154000/オーラリー デニムパンツ¥15400/ビオトープ(リーバイス フォー ビオトープ) ピアス¥24545、ブレスレット¥32700/トムウッド 青山店(トムウッド) ※本記事掲載商品の価格は、税込み価格で表示しております。