エネルギー業界のメタン削減取り組みに試練、度重なる警告で浮き彫り
(ブルームバーグ): タイ湾にある天然ガスの海上プラットフォームは、10年余り前に初めて検知されたメタンガスの排出に関して、国連の監視当局から今年新たに警告を受けた。世界の石油・ガス会社が国際的な枠組みで合意した温室効果ガス削減は、その道のりの険しさがあらためて浮き彫りになっている。
問題のプラットフォームは、国営エネルギー会社であるマレーシアのペトロナスとタイ石油開発公社(PTTEP)が、子会社を通じて立ち上げた合弁事業が操業。2013年以降、人工衛星による監視で少なくとも60回のメタン排出が確認されており、最近では5月に監視当局が両社の対応を求めて勧告した。
国際メタン排出観測所(IMEO)の責任者マンフレディ・カルタジローネ氏は声明で、「排出の規模と持続性を考えると、迅速な対策が必要だ」と述べた。IMEOは、国連が中心となって21年に設立。世界で最大規模のメタン排出を追跡し、排出阻止に向けて事業者や政府に警告する機関で、タイ湾のプラットフォームに対しては昨年4月と11月にも関係者に警告していた。
昨年12月には国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、石油・ガス企業50社が30年までにメタンの排出量をゼロに近づけ、定期的なフレアリング(生産時の余剰ガス焼却処分)の終了を約束する「石油・ガス脱炭素憲章」に参加を表明。ペトロナスとPTTEPも名を連ねており、業界全体が削減の加速にコミットする中で、マレーシアとタイの共同開発地域を拠点とする両社の合弁事業には注目が集まりやすい。
ペトロナスは、合弁事業が操業するプラットフォームでのメタン排出は漏えいの結果ではないと資料で説明し、操業および周辺地域の安全が確保されていることを強調。PTTEPは、子会社による排出量削減に向けた努力と合弁事業がメタンの排出管理計画を実行する上で「全面的に協力している」とコメント。両社ともメタン排出の原因については明言を避けた。