映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』スカッと痛快な復讐&犯罪映画
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Navigator:折田千鶴子さん 映画ライター 祝・『SHOGUN』快挙! 実はJACに入ろうとしたりコンサートに行ったくらい、真田さんのファン。
『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』
▶どこで見破れる? ひざを打つほど、スカッと痛快な復讐&犯罪映画 社会現象化した“カメ止め”こと、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の最新作は、またもギャフンと騙してくれる痛快作。口惜しまぎれに「一瞬そうかとは思ったんだけど……」なんて言いたくなるが、それをスレスレでかわされる“してやられた”感! 韓国ドラマ『元カレは天才詐欺師 ~38師機動隊~』のリメイクだが、そこはしっかりと一世を風靡した作家の矜持を見せ、オリジナルの展開や味わいを存分に加えて一気に見せ切る。何はともあれ、ノッたもん勝ちの快作です! まじめだが事なかれ主義の税務署職員・熊沢(内野聖陽)は、のらりくらりと業務をこなしている。だが使命感に燃える部下(川栄李奈)が、巨額脱税疑惑のある大企業の社長・橘(小澤征悦)に暴走して接触。一緒にいた熊沢が暴力を振るったと逆に橘から訴えられ、署内は大騒ぎに。同じ頃、妻に車の買い替えを求められた熊沢は、出所したばかりの天才詐欺師・氷室(岡田将生)が手軽に企てた中古車販売詐欺にあっさり引っかかり、80万円を騙し取られる。親友の刑事(皆川猿時)の助けで氷室にたどり着くが、今度は氷室から「見逃せば橘が脱税した10億円を取り戻してやる」と持ちかけられる。橘をハメる詐欺に加担することに葛藤しつつも、熊沢は“ある復讐”のため氷室と手を組むことに。そして氷室が集めた仲間と、壮大な“税金徴収”詐欺計画に取りかかる。 橘に赤ワインを頭からかけられても必死で堪えて詫びる、その姿に観ている我々の胃がキリキリしそう!いかにも“小役人”風情でペコペコ頭を下げる情けなさと同時に、実は誠実で心に“何か熱いもの”を秘める一面を垣間見せる、そんな離れ業を飄々(ひょうひょう)とやってのける内野聖陽に、噴き出したり惚れ惚れしたりと終始ヤラれっぱなし! 似合わぬビリヤードで賭け勝負に挑む際の、キョドってる感とドヤ感が交互に入れ替わる、その表情はもはや名人級! 一方、冷徹に騙して微動だにしない、氷室が隠し持つ本当の姿――おっと、これ以上は明かせない“お楽しみ”も、つい先日まで『虎に翼』で日本列島を朝からキュンキュン&ウルウルさせた岡田将生のなせる業。その他、詐欺集団をはじめ隅々までオールスターキャストが揃い、絶妙な外連味(けれんみ)をきかせながら要所要所でおおいに沸かせる。後半はもう、騙せるか否か、バレるかどうかのドキドキが止まらない。果たして詐欺の成果は?あなたは何を、どこで見破れるか!? 実は少なからぬ人が単なる詐欺にとどまらず、いろんな思いや事情を抱えながら加担し、一世一代の勝負に出たという、秘めたるドラマにも熱くなる。「あ~おもしろかった」とひざを打ったその後で、それらがジワジワ効いてくる。と同時に、「ということは本当はあのとき、あの人は……」と、逆回転で答え合わせをしながら、もう一度観たくなってくる。どっぷり2時間、熊沢の奮闘に気持ちよく翻弄されたら、きっと日頃の鬱憤や悩みも吹き飛んでいるハズ! 11月22日より新宿ピカデリーほか全国公開