今度はテレビにも使える! Creativeの新小型サウンドバー「SoundBraster GS5」
■ 続くGSシリーズ これは本誌だけの傾向なのかわからないのだが、記事のビュー数を追っていくとCreativeのサウンドバーの記事が良く読まれるという傾向がここ数年続いている。Creativeと言えば元々はデスクトップPC向けサウンドカードで名を馳せたメーカーなのだが、昨今はPCやゲーム機を対象としたサウンドバーを数多く手がけている。 【画像】前作GS3(手前)より横幅が10cmほど長い 今年も3月に「Sound Blaster GS3」をレビューした。同社独自技術の「SuperWide オーディオ エンハンスメント」が久しぶりに搭載され、スピーカーの幅を超えるサラウンド感が得られるのが特徴で、実はレビュー後に筆者も個人的に購入し、普段は仕事中の音楽再生で楽しんでいる。 そんなSound Blaster GSシリーズに、機能強化された新モデルが登場する。11月上旬から発売予定の、「Sound Blaster GS5」だ。価格はオープンだが、直販サイトでの価格は11,000円となっている。 そもそもはゲーミング用として販売されているシリーズだが、入力の種類が大幅に増えて多様な使い方ができるようになった。新しいGS 5を、早速聴いてみよう。 ■ 順調にアップグレードしたボディ まずボディだが、基本的なデザインはGS3を踏襲している。ただ全長が51cmと、GS3より10cmほど長くなっている。高さも厚みもそれなりに大きくなっている。 内蔵スピーカーも3.35×2.16インチの楕円形フルレンジスピーカーで、GS3より一回り大きくなっている。内部にバスチューブがあり、その先が左側にバスレフポートとして空いているところは同じだが、周波数特性もGS3が100Hz~20kHzだったのに対し、GS5は65Hz~20kHzとなり、より低域が出るようになった。 GS5では外部電源を使用する。GS3はUSB-C端子で電源と信号伝送を両方やっていたので、ピーク出力は24W止まりだった。GS5は60Wに強化されている。 入力端子も光デジタル入力が装備され、テレビからのデジタル入力に対応できる。もちろんゲーム機も光デジタル出力端子が付いているものも多いので、それも想定されているのだろう。 Bluetooth接続も対応しているが、ここは相変わらずSBCのみだ。同社ではBluetooth LE Audioなど最新コーデックをいち早くサポートするトランスミッタ商品を多数取り揃えているが、サウンドバーシリーズのBluetoothコーデックのしょぼさは同社の先進性からするともはや異様に見える。 また遠隔からモード変更できるよう、リモコンも付属する。GS3は手が届く範囲でのニアフィールドスピーカーとして設計されていたのに対し、今回は離れて聴くというユースケースを想定したということだろう。 リモコンが必要なもう一つの理由は、モードが飛躍的に増えたことだ。GS3で好評だった「SuperWide オーディオ エンハンスメント」は、ニアフィールド用とファーフィールド用の2モードとなった。また音質も、ノーマル、ゲーミング、ムービーの3モードを備える。さらにはトーンコントロールとして、±3の調整ができるようになった。 これらは排他仕様になっておらず同時に使えてしまうので、そのサウンドの組み合わせは膨大なものになる。さすがにこれだけの組み合わせ操作を、本体ボタンでやらせるのは無理がある。リモコンでの操作が妥当ということだろう。 なおこうした多彩なモードに対応して、本体正面の中央部には7セグメントのLEDディスプレイを2つ備えた。2文字しか表現できないが、ステータスは大体わかるようになっている。 ■ 機能強化されたSuperWide では早速音を聴いてみよう。 まずはMacBook ProにUSBで接続し、Amazon Musicでいつものドナルド・フェイゲン「Morph the Cat」を再生する。最初はすべてのエフェクトをOFFにして、素の状態で試聴した。スピーカーと頭との距離は、約80cmである。 低域特性がGS3よりも良くなっているので、重厚なベース音の張り出しも申し分ない。また全長が50cm以上あるので、左右のスピーカーもそれなりに離れており、ニアフィールドで聴く分にはステレオ感もかなりある。無理に「SuperWide」を使わなくても、それなりにちゃんと聴かせる音だ。 ただし接続としては48kHz/16bit固定なので、ハイレゾ対応ではない。軽く聴き流すなら十分だが、ハイレゾ音源を楽しみたいという人には力不足である。 続いて「SuperWide」のニアフィールドに切り替えてみる。元々楽曲自体も隙間が多いサウンドなのだが、その隙間が大きく広がり、左右に本体1つ分、全長1.5mぐらいの幅で鳴っているように聴こえる。若干中抜け感もあるのだが、低音がしっかりしているので、サウンドが大きく壊れる感じはない。ただ、元々の楽曲に左右に広げるコーラスエフェクトがかかっている部分は、だいぶ奥まって聴こえる。 GS3の効果と比べると、だいぶ派手にかかる印象だ。GS3に慣れていると、若干やりすぎ感も感じる。 次に「SuperWide」のファーフィールドに切り替えてみる。同じ80cm位置で聞くと、高音がグッと張り出して中抜けするという、なんじゃこれ的なサウンドなのだが、視聴位置を2m程度まで後退すると、印象がガラッと変わる。 拡散しやすい高域部分がちょうどいいバランスとなり、低音も芯がしっかりした直進性の高い音で迫ってくる。GS3のエフェクトでは離れた場所ではあまり効果がなかったが、なるほどこれはよくチューニングされている。 プロジェクタなどの大スクリーンでゲームをやるにはスクリーンから離れることになるが、そうした用途が想定されているのだろう。だがゲームだけで使うのはもったいない。部屋の隅に置いてBGMとして部屋全体で音楽を楽しむといった用途にも使っていきたいところだ。 では「SuperWide」をOFFに設定して、今度はムービーとゲームモードを試してみる。ムービーモードに切り替えると、真ん中がポーンと抜けて、ダイナミックレンジも抑制的に聞こえる。 入力をスマートテレビからの光デジタルに切り替えて、Amazon Primeで公開が始まった「ゴジラ1.0」を視聴してみた。開始40分ほど過ぎた、海上でゴジラと遭遇する場面である。 ムービーモードだけのサウンドは、やはり中抜けが激しく迫力に欠ける。だが「SuperWide」のファーフィールドを併用し、離れた位置から視聴してみると、まさに劇場っぽいサウンドが広がった。ムービーモードは単体で使用するというより、「SuperWide」と組み合わせて使用するべきだろう。 試しにムービーモードなしの「SuperWide」のみで視聴してみたが、セリフなどは聞き取りやすい一方、どうも音が真ん中に集まりすぎていてこじんまりした印象がある。それを見越して、ムービーモードが作られているということだろう。 続いてゲームモードを試してみる。普通に音楽再生で聞くと、音が前面に張り出してくるような印象のあるモードだが、ゲーム音声ではどうだろうか。生憎最新のゲーム機は手元にないので、YouTube公式チャンネルから「グランツーリスモ7」のオープニングムービーを再生してみた。 車のエキゾースト音に音楽がかぶってくるという構成になっているが、ノーマルよりもゲームモードのほうが音の輪郭がはっきりして、没入感がある。「SuperWide」と組み合わせれば広がり感は得られるが、逆にコンテンツへの求心性という意味では、「SuperWide」なしでも十分だ。この辺りはゲームの特性や方向性でも好みが分かれる部分なので、内容に合わせて組み合わせを調整するというのがいいだろう。 ■ さらに多彩なサウンドエフェクトが使える リモコンにはさらに、「TONE」というボタンもある。昔のオーディオでトーンコントロールといえば、バスとトレブルを個別に操作するものだったが、GS5ではそれを合体させたような機能として置き換えられている。 TONEを上げていくと、バスとトレブルを同時に上げていったような、ドンシャリ気味のサウンドになる。明瞭感は上がるので、少しハイ落ちしたソースなどには有効だろう。一方TONEを下げると、反対にハイとトレブルが下がっていき、中音域が立ち上がってくる。セリフが聞きづらいときに使うと効果が高い。 個人的にはノーマル状態が一番好みではあるが、ソースによって物足りないと感じた時にちょこっと補正できる機能がついているのは、気が利いている。 さらにWindowsマシンで使用する場合は、「Creative App」によって「Acoustic Engineオーディオエンハンスメント」が使える。これもGS3にはなかった機能の一つだ。 macOS向けにもCreative Appは提供されており、Bluetoothトランスミッタ製品などにはAcoustic Engineが使用できるが、GS5はmacOS版ではサポートしないのか、デバイスが認識されなかった。よってここからはWindowsマシンでテストする。 Acoustic Engineの中身としては、サラウンド感を強める「サラウンド」、高域特性を改善する「クリスタライザー」、低域特性を改善する「バス」、自動音量制御の「スマートボリューム」、音声帯域の特性を改善する「ダイアログ+」の5つが、それぞれ0~100%の範囲で設定できる。この辺りは同社製Bluetoothトランスミッタ製品でも同じ機能が提供されているので、すでにご存知の方もいらっしゃるだろう。 Windowsマシンでも同じ音源でテストしてみたが、「サラウンド」はGS5本体のSuperWideと一緒に使うとワケが分からないサウンドになってしまうので、どちらかを選ぶということになる。個人的にはGS5本体のSuperWideのほうが、本体に合わせてカスタマイズされている分、効果は高いように思える。 そのほか10バンドのグライコも使えるなど、かなり細かく設定できるのだが、本体の機能も排他ではなく一緒に使えてしまうので、どちらでチューニングするかをある程度決める必要がある。 なおCreative Appの効果は同社製サウンドドライバ上で実現しているので、入力を変えたり別のマシンにUSB接続してしまうと、効果がなくなる点は注意していただきたい。 GS5ではスマートフォン版のCreative Appも使える。これもGS3にはない機能だ。こちらは単にリモコン同様の機能があるだけだが、わざわざリモコンを探す必要もなく設定変更ができる点は気が利いている。 ■ 総論 USB接続がメインだったSoundBlaster GS3に対し、外部電源を使うことでパワーを上げ、より大音量対応のスピーカーに仕上げたのが、GS5の立ち位置である。さらにスマホアプリやWindowsアプリに対応し、同社提供の機能のほとんどが使える万能モデルでもある。 特徴的なSuperWideは、GS3ではON・OFFの切り替えしかなかったが、より機能が拡張され、ニアフィールドとファーフィールドで使い分けができるようになっている。 ただGS3のナチュラルなサラウンド感に比べると、どちらのモードもだいぶ大げさな感じにチューニングされている点は、賛否が分かれるところだろう。ゲーム音に関してはどれが正解かというものはないと思うが、音楽に関しては原音からそんなに離れるのはどうなのかというある種の正解はあるわけで、そこは問題視される。 PCに繋いでちょっと聞くだけというなら、GS3で十分だろう。一方テレビに繋いで離れた場所からサラウンドを楽しみたいという場合は、GS5というチョイスになる。ただ、Dolby Atmosや360RAのような規格に対応しているわけではなく、あくまでもステレオサウンドを広げる独自規格なので、その辺りは誤解のないようにお願いしたいところである。
AV Watch,小寺 信良