『シュレディンガーズ・コール』生き残った最後の人類として電話越しに相手の悩みを聞くアドベンチャー 【TGS2024】

『シュレディンガーズ・コール』生き残った最後の人類として電話越しに相手の悩みを聞くアドベンチャー 【TGS2024】

「シュレディンガーの猫」という思考実験をご存知だろうか。観測するまでは物事の状態が確定しないという量子力学の考え方に則ったもので、端的に言うと箱の中に閉じ込められた猫の生死は箱を開けるまではわからないという現象だ。その思考実験を彷彿とさせるのがアドベンチャーゲームの『シュレディンガーズ・コール』で、プレイヤーは人類最後の1人として死にきれない魂と電話で交流していく。 「PC」画像・動画ギャラリー IGN JAPANは東京ゲームショウ2024試遊出展された本作をプレイすることができた。約20分間の試遊を通じて得たインプレッションをこの記事でお伝えしたい。 本作の主人公は記憶喪失の少女メアリ。記憶を失う前の自分がどのような人物だったかを全く思い出せないことに動揺する主人公に、人語を話す黒猫が話しかけてくる。おもしろいと思ったのは、主人公とプレイヤーの考え方が一致するようなストーリーに展開されていくことだ。利己的に生きたいのか、それとも他者を助けるように生きたいのかを本作は問いかける。記憶喪失の主人公を採用することで、プレイヤーの考えていることが反映されやすい。 今回の試遊では、黒猫の問いかけに「誰かのために生きていきたい」を選択した。そうしたところ、同じ考えを持つというキャラクターのルーシが電話をかけてきた。ルーシーは悩みを抱えており、大事な人のことを忘れてしまったらしい。大事な人であるにも関わらず、その人と自分のつながりを思い出せないルーシーは悲しみに暮れている。 主人公は相手の話を聞きながら、重要そうなことをメモしていく。メモした内容はいつでも見ることができるため、相手の悩みを解く手がかりとなっている。選択肢によっては相手の記憶を呼び覚ますような情報を提示して、会話を発展させていく場面が存在した。ルーシーが大切な人だと思っているキャラクターの名前をはじめ、ルーシーとの関係性や過去の出来事が次第に明らかになる。 謎を解いていく楽しみはもちろん存在するが、それが必ずしも幸せな過去が明らかになるとは限らない。ルーシーの思い出したかった出来事もかなり衝撃的なものであり、会話を終えたあとは切ない悲しさに包まれる。それでも真実を告げて良かったと思う。というのも、本作の世界は月が地球に衝突して主人公以外の人類が消滅してしまっているからだ。 今回電話で話したルーシーもすでに死んでいる。本作では顔が動物のグラフィックで表現されているが、これは主人公が電話越しに想像した姿だ。本作では死んでしまった人類は魂の存在になっているようで、生前に悩みを抱えていた人間は魂になっても苦しみから解放されていない。真実がときに残酷でも、悔いを解消させたことへの不思議な実感を覚えた。テキストは1文が短くて読みやすく、場面に合わせた豊富な楽曲がストーリーへの没入感を高めている。 今回の試遊ではメアリーからしか電話がかかってこなかったが、製品版ではさまざまなキャラクターが登場する模様。人類最後の1人として死者の魂の悩みを解決していくのは大変なことになりそうだが、そのぶん主人公の過去も気になってくる。「シュレディンガーの猫」にちなんだ作品名になっているのは意味深であり、プレイすることでどのようにストーリーが展開されていくのか気になったタイトルだ。 『シュレディンガーズ・コール』は、2025年発売予定。Steamストアページではウィッシュリストへの登録を受け付けているので、興味がある場合はチェックしておこう。