揺れる“築地市場移転問題”で知りたい そもそも卸売市場の役割とは?
11月7日に開場予定だった築地市場は、小池百合子都知事の鶴の一声によって延期されることになりました。その後、新たな移転地として整備されていた豊洲市場は、当初の説明とは異なる土壌汚染対策がなされていたことが発覚。小池都知事が緊急記者会見を開くなど、先行きの不透明感は増しています。 紛糾する築地市場の移転問題ですが、翻って私たち消費者にとっても築地市場は“食”という大きな問題でもあります。築地市場は、中央卸売市場と呼ばれる“食”にとって重要な場所になります。今般、食品流通のあり方も大きく変化する中、卸売市場はどんな機能を果たしているのでしょうか?
流通過程は大きく変化しても… 「安定的供給」は卸売市場の役割
築地市場の移転計画が浮上したのは、今から30年以上も前に遡ります。当時、築地市場の水産物取扱量は年々増加していました。そうした中、市場が手狭になったこと、物流が鉄道輸送からトラック輸送へとシフトして市場の構造が時代に合わなくなっていたこと、老朽化などを理由に築地市場を閉鎖と市場の移転計画が検討されていたのです。今般、話題になっている築地の移転計画は、このときから始まっていると言っても過言ではありません。 しかし、当時と今とでは社会状況が大きく異なります。30年前、スーパーマーケットなどはありましたが、街にはいたるところで個人経営の八百屋や魚屋がたくさん営業していました。現在、当たり前に見かける大型ショッピングセンターもなく、インターネットによる取引もありません。私たち消費者は小売店で食品を購入するのが一般的ですが、その小売店にいたるまでの流通過程は大きく変貌しているのです。 そうなると、小売店などに食品を広く流通させる卸売市場の存在意義も揺らぎます。そもそも卸売市場は、どういった役割を果たしているのでしょうか? 農林水産省食料産業局食品流通課の担当者は、こう説明します。 「卸売市場は生鮮食品を国民に安定的に供給するのが役割です。わかりやすく野菜で例えると、スーパーや八百屋で販売している野菜の多くは、農家や農協から直接仕入れたものではありません。農家や農協は卸売業者に農産物を託し、卸売業者は仲卸業者との間で競りをおこないます。この競りで落札された野菜がスーパーや飲食店などに並んでいるのです」。