「自分はまだまだ。インパクトが少ないなって思っちゃう」酒井高徳が自らの存在意義について持論を展開「極論を言うと、400試合出ても…」
出場試合数は「ただの数字」
フットボーラー=仕事という観点から、選手の本音を聞き出す企画だ。子どもたちの憧れであるプロフットボーラーは、実は不安定で過酷な職業でもあり、そうした側面から見えてくる現実も伝えたい。今回は【職業:プロフットボーラー】酒井高徳編のパート3だ(パート5まで続く)。 【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「 J歴代ベスト11」を一挙公開! ――――――◆―――――◆―――――― プロフットボーラーにとって、ワールドカップ出場は大きな目標のひとつだ。それを2大会(2014年、18年)も参戦している酒井高徳選手は成功者に映る。しかし、本人にそうした感覚はない。 実際、「2大会続けてワールドカップのメンバーに選ばれた喜び、本大会で1試合しか出場できなかった悔しさ、どちらが大きいですか?」と訊くと、酒井選手は「後者ですね、完全に」と即答している。 「ワールドカップって、行くためにあるわけじゃないので。4年間準備してきたものを発揮する大会です。何も日本代表のために4年間を費やすと言っているわけではありません。クラブメインのキャリアで積み上げた成果を日本代表の試合で示すのが選手の使命であり、心意気だと思うんですよ」 要するに、クラブの延長線上に代表チームがあり、その先にワールドカップがあるという考えなのだろう。加えて、ワールドカップを戦ううえではスタメンやサブなどの立ち位置に関係なく、ピッチに出た時に自分を証明できるよう4年間準備するというのが、酒井選手の流儀である。 「親善試合などを戦っていくなかで、スタメンかベンチかはなんとなく分かっていました。ただ、そこを気にしても意味はないので、練習から自分の最大限を出すようにしていました」 それでも、ワールドカップで起用されたのは18年大会のポーランド戦(グループリーグ第3戦)のみ。全力で準備しても満足行く結果を得られなかったから、14年大会も含め「ワールドカップには悔いしかない」。 ちなみに、酒井選手の日本代表歴は42キャップ。ここにクラブキャリア(J1リーグ通算217試合出場、ブンデスリーガ1部通算170試合出場、ブンデスリーガ2部通算31試合出場)を足すと、プロとして400試合以上もこなしている。偉大な足跡に映るが、本人の答は「本当に、なんの嘘もないですけど、全く気にしてないです」と素っ気ない。 「数えてもないし、言われて『そうなんだ』くらい。ただの数字でしかないです。それよりも大事なのはインパクト。自分のパフォーマンスがみんなに伝わっているか、認められているかです」 その意味で、「自分はまだまだ。インパクトが少ないなって思っちゃう」と酒井選手は本音を漏らす。「インパクトやゴール、結果を通して自分を表現できるかが重要」とあくまで“インパクト”にこだわる。 「偉大な選手が色々と記録を残しているのは素晴らしいです。ただ、極論を言うと、400試合出てもまるで目立たない、地味な選手なら僕は意味がないというか、自己満足でしかないと思ってしまう。たとえ30試合しか出なくてもめちゃくちゃ点を取っている選手のほうがよほど凄いと捉えています」