石坂浩二が明かす、名演出家・名監督との交流「浅利慶太さんの助手として働いた忙しい日々」「出番がなくても毎日通った市川崑監督の現場」
市川崑監督の現場通いで学んだこと
映画監督の故・市川崑さんもまた、石坂を重用し続けたひとりだ。 「1976年の映画『犬神家の一族』(東宝)の撮影のとき、市川さんからは“自分が出演していないシーンの撮影日でも毎日現場に来なさい”と言われていたので、本当に毎日、出番がなくても通っていました。そこで、監督が撮影中にブツブツ話していることやスタッフへの指示なんかも聞いていましたね。監督はぼくたち俳優には細かいことを言わず、段取りを説明するくらいで、比較的穏やかでした。 監督が巨人、ぼくが阪神ファンだから、それでけんかになるくらいで……。でも、スタッフには怖かったみたい(笑い)」 石坂が出演していない作品であってもスタッフから、 「来てくれると監督がご機嫌になるから」 とも言われたという。 「市川さんは、自分が尽力した作品であっても評価が伴わない場合は、失敗した、ダメだったと素直に認められるかた。そういった面もぼくは尊敬していましたね」 (第3回につづく。第1回から読む) 【プロフィール】 石坂浩二(いしざか・こうじ)/1941年、東京生まれ。高校在学中の1958年、テレビドラマ『お源のたましい』(KRTV・現TBS)にエキストラ出演。演出家の故・浅利慶太さんに誘われ、慶應義塾大学法学部卒業後、「劇団四季」へ入団。1963年の『花の生涯』を皮切りに『天と地と』(1969年)、『元禄太平記』(1975年)、『草燃える』(1979年)などNHK大河ドラマに多数出演。1976年には映画『犬神家の一族』(東宝)に主演し、以後、市川崑監督作品の“顔”に。作家、司会者、ナレーターなどでも活躍。2009年NHK放送文化賞を受賞。画家としては1974~1985年まで二科展に連続入選。 【今後の出演情報】 映画『海の沈黙』 脚本家・倉本聰さん(89才)が半世紀以上温めていた構想を映画化。贋作絵画を巡る人間模様を描く。主演は本木雅弘(58才)。石坂は著名な画家役で出演。11月22日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ)。 NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』 2025年1月5日から放送予定。江戸時代の“出版王”とされる蔦屋重三郎の生涯を描く。主演は横浜流星。石坂は徳川吉宗・家重・家治の将軍3代に仕えた老中首座・松平武元役。 取材・文/上村久留美 撮影/政川慎治、平野哲郎 ※女性セブン2024年10月24・31日号
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