【フィギュア】鍵山優真の時代到来、新エースに「第１歩」史上２例目の父子日本一「泣いてくれた」
＜フィギュアスケート：全日本選手権＞◇21日◇第2日◇大阪・東和薬品RACTABドーム◇男子フリー ショートプログラム（SP）首位の鍵山優真（21＝オリエンタルバイオ／中京大）が、通算7度目で念願の初優勝を遂げた。フリーも1位の205・68点を記録し、合計297・73点。2010年の小塚崇彦以来史上2例目となる父子優勝を、この大会90年度から3連覇の父正和コーチ（53）と達成した。来年3月の世界選手権（米ボストン）代表に内定。昨季まで12年間続いた羽生結弦、宇野昌磨2強から、名実ともにエースの鍵山時代が到来した。 ◇ ◇ ◇ 鍵山はキス・アンド・クライで、跳びはねて歓喜した。隣では、冷静沈着な父が涙を流しながら、静かにうなずいていた。初めての日本一に加え、史上2例目の父子制覇。「久しぶりに父が感動で泣いてくれた。最後まで諦めずに滑り切れたことはもちろんだけど、コーチが満足してくれたことがうれしかった」。ただし満足はない。父の金メダル3個を超える－。全日本に新たな目標が加わった。 「最後まで全力で戦ってこい」。父の言葉に、ぐっと背中を押された。冒頭の4回転フリップで4・71点ものGOE（出来栄え点）を引き出すと、続く4回転サルコーも楽々着氷。後半に乱れはあったものの、悔しいミスが続いた今季前半戦の焦燥感はない。最後まで、冷静に、魂を込めて演じ切った。「ぶつかっていた壁も、少し乗り越えられそうがする」。リンクに大の字になった背中から伝う冷たさが、心地よかった。 「ゴールではなく、また新たなスタートになる」。全日本では羽生、宇野の壁が高かった。21年の世界選手権や22年北京五輪では格上2人より順位が上の銀メダル（五輪は日本史上最年少）はあったが、日本一を争う真剣勝負では敵わなかった。2人がプロ転向した後も「僕1人が引っ張っていくわけではない」と“エース”の呼称を遠慮してきたが、この日は強く実感した。「その第1歩に足を踏み入れることができた」。 初栄冠も通過点だ。切符を手にした4度目の世界選手権は、日本王者の称号で初めて迎えるが「理想はもっともっと高いところにある。常にチャレンジして、もっともっと上を見て努力していきたい」。日本の「新エース」は己の可能性に挑み続ける。【勝部晃多】
