『ブギウギ』制作統括に聞く昆夏美&浩歌の起用意図 李香蘭&黎錦光の実名登場の理由も
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。 【写真】「世界を魅了した歌姫」昆夏美が演じる李香蘭 第13週、14週では、スズ子が愛助(水上恒司)の助言によって、あらためて“歌の力”を信じて前を向く。一方、羽鳥善一(草彅剛)は陸軍の報道班員として上海へ渡り、中国人作曲家・黎錦光(浩歌)らと親交を深めながら、新たな音楽を模索。第65話では、羽鳥が編曲した「夜来香」を李香蘭(昆夏美)が華やかに歌い上げた。 羽鳥のモデルである服部良一もまた、戦争末期にジャズを求めて上海へ渡航。自由な音楽に触れ、戦後のヒット曲を生み出す土台を築いた地でもある。制作統括の福岡利武は「上海の羽鳥善一を描くかどうか決めかねたところではありますが、やはり『東京ブギウギ』に向けた羽鳥を描く、さらには戦後の復興にかける思いを描く上でも大事だということで、上海のシーンもしっかりと表現することにしました」と話す。 李香蘭を演じたのは、ミュージカル俳優の昆夏美。福岡は「昆さんはミュージカル等で拝見していましたが、歌が本当に素敵で。ヒロインのオーディションを受けていただいたこともあり、どこかでご一緒できたらと思っていました」と起用理由を明かし、「1日だけの登場ではありますが、非常に印象に残る『夜来香』を披露してくださいました。歌の練習は、びっくりするほど少なかったと思います。さすがはミュージカルスター。歌の習得が非常に早くて、すごいなと思いました」と絶賛する。 「上海という設定でたくさんのエキストラの方を入れて撮影しましたが、しっかりと歌を作り込んできていただいたので、歌唱シーンが終わったあとには拍手が鳴り止まないほどでした。短いシーンではありますが、昆さんにもやりがいを感じていただけたようで、『すごく楽しかったです』とおっしゃる笑顔が印象的でした」 草彅も惜しみない拍手を送っていたそうで、「『(撮影地は)大阪だけど上海にいるような気にもなって、とても良かった』とおっしゃっていました」と現場の様子を振り返った。 「夜来香」の作曲者でもある黎錦光を演じるのは、中国で最も有名な日本人とされる浩歌。福岡は「黎錦光役をどうしようかと悩んでいたときに、『中国を中心に大活躍している浩歌さんなら中国語も達者ですし、彼に演じていただけたら面白いんじゃないか』とスタッフから声が上がりました。そこで、とにかくスケジュールを聞いてみようと確認したら、たまたま日本にいらしていた時期だったんです」とキャスティング秘話を明かす。 さらには「中国のことにとても詳しいので、その時代の空気感、上海感を出していただけました」とし、「僕は『坂の上の雲』(NHK総合/2009~2011年)というドラマで50日間くらい中国に行って、現地のスタッフや役者さんと一緒にお仕事をしたことがあるんです。そこでの経験も相まって、浩歌さんと草彅さんの“中国の方と日本人の友情”のようなものが非常にリアルに感じられて、素晴らしいなと思いました」と熱を込める。 現場では浩歌と草彅が会話する場面も多く見られたといい、「草彅さんともお芝居が合うようで、リハーサルからスムーズに進んだ印象があります。前室の雰囲気も良かったですし、中国の撮影のことなど、いろいろと楽しそうにお話しされていました」と語った。 なお、これまで『ブギウギ』に登場してきたキャラクターはモデルがいるとはいえ、あくまで架空の人物として描かれてきた。だが、李香蘭と黎錦光は実在する人物名。これについて福岡は「実際のエピソードでもありますし、このシーンを大事にしたい”というリスペクトの思いから、ご本人のお名前を使用させていただきました」と説明した。 上海で開催した音楽会は大盛況のうちに終幕。「音楽は自由だ!」としがらみから解放された羽鳥が、ふたたびブギの女王・福来スズ子とともに歩き出す日が待ち遠しい。
nakamura omame