大塚家具の内紛で見落とされている2つの視点
このところの大塚家具の内紛は、創業者の父と社長である長女との「血族の争い」といった構図で描かれ、テレビのワイドショーの格好のネタになって広く社会的な関心を集めています。映画やドラマを地で行く展開になっていますが、見落としてはいけないのは、大塚家具はれっきとした上場会社であり、株主や従業員、取引先などのステークホルダー(利害関係者)に大きな責任を持っているということです。 大塚家具内紛、決着の決め手は? ── プロキシーファイトの行方 それを考えるならば、いつまでも泥仕合を続けている場合ではありません。いま、増配狙いもあって株価は一時的にあがっていますが、双方の“陣営”が「社員がかわいそう」と言っている間に、企業の実質的な価値はどんどん低下しています。これこそ「社員がかわいそう」な状態にあるといえます。
ポイント1:会社は誰のものか?
ここで重要なのは「会社は誰のものか」という点です。これは経済社会の永遠テーマともいえますが、創業者側、長女側の双方から応酬が続き、収束に向かう気配はありません。もし同族経営の会社でなかったら、普通は「あの会社、何をやってるの」という周囲の目、いわゆる「ピア・プレッシャー」に経営陣は耐えられないはずです。 現在のところ、創業者の父が始めた会員制サービスと長女の主張する「気軽に入れる」店舗戦略が正面から激突している構図ですが、普通の会社ならこうしたビジネスモデルの対立はある程度の段階で「落としどころ」を見出すのが通例です。例えば、ハイエンド(高級品)とローエンド(廉価版)で商品ラインナップを調整して店舗を棲み分けるといったやり方です。しかし当事者たちは一歩も譲りません。双方、著名な弁護士事務所の支援を受けながらメディアを巻き込んで、互いの主張に耳を貸そうとしないのです。 しかし、冷静に状況をみてみると、少子高齢化の進展で、住宅需要も先細りの中、これから先、家具がどんどん売れる時代が待っているとはいえません。20年にわたるデフレ体質がいまだにしみついている日本の経済社会の中で、家具のような耐久消費財であっても「安価路線」が進んでいるのはまぎれもない事実です。大塚家具がそうした消費者の需要に答えられているかどうかは、ここ数年の業績をみれば物語っているともいえます。