“子供しかいない世界”で1人の少女が弟探しの旅に出る…パンデミック・ファンタジー「ANNA/アンナ」全話振り返り
さまざまなヒットコンテンツが生まれた2023年。多彩なエンタメコンテンツを発信してきたWEBザテレビジョン編集部が、反響のあった注目コンテンツを紹介する。その一つが、オンライン動画配信サービス「Hulu」にて、全話独占配信中のパンデミック・ファンタジー「ANNA/アンナ」だ。本作では謎の“赤い病”が蔓延し、14歳以下の子供だけになった世界で、ジュリア・ドラゴット“アンナ”とアレッサンドロ・ペコレッラ“アストル”の姉弟が、壮絶な冒険を繰り広げていく。同小説の原作者であるニコロ・アンマニーティ自らが監督、脚本を手掛けたことでも話題となった。本記事では、独特な世界観で描かれる全6話のあらすじを振り返る。(以下、一部作品のネタバレを含みます) 【写真】圧巻の美しさ…白いドレス姿のでこちらを見つめるジュリア・ドラゴット“アンナ” ■“青い子供”に弟・アストルがさらわれる… 物語の舞台はイタリアのシチリア島。謎の“赤い病”が蔓延し大人は全滅、14歳までの子供だけが生存できる世界となったことで街は荒廃し、毎日食べ物を求め子供たちが彷徨っていた。そんな中、主人公のアンナ(ジュリア・ドラゴット)とアストル(アレッサンドロ・ペコレッラ)の姉弟は生まれ育った家で暮らしており、アンナが弟であるアストルのために食料を探す日々が続いていた。 第1話と第2話では、アンナの幼少期の回想シーンを交えながら進んでいく。アンナの両親が生きていた頃、すでに両親は離婚しており、アンナは父親と暮らしていたのだが、ある時母親がアンナを引き取ることに。田舎町へやって来たアンナは、そこでアストルと出会い、日に日に“赤い病”で弱っていく母親の傍で必死に弟の面倒を見る。そんな中、母親は死に際にアンナにノートを渡す。そこには食料の探し方や遺体の処理の仕方など、生き抜くために必要な術がぎっしりと書かれていた。その後アンナは弟と2人きりになっても、母親の「あなたが弟を守るのよ」という言葉を胸に、アストルを家の敷地外から出さず、毎日食料を探しに出かけるのだった――。 ある日アンナがいつものように食料を探していると、ピエトロ(ジョヴァンニ・マヴィラ)という少年に出会う。ピエトロは全身を青いペンキで塗られた“青い子供”というギャング集団からアンナと共に逃げ、2人はともに行動するようになる。アンナは久しぶりの同世代との交流に、ひと時の心の安らぎを感じていた。 しかしアンナがピエトロの家のプールで遊んでいる間、アストルは“青い子供”という集団にさらわれてしまう。アンナはピエトロに一緒に助けに行くよう頼むのだが、ピエトロは“アストルが自分の意思でついて行った”と断り、結局アンナは1人で“青い子供”のアジトへ向かうことを決意する。 ■“青い子供”のアジトで想像を絶する出来事が起きる… 第3話からは“青い子供”のアジトでの生活が描かれた。この集団では個性の強いアンジェリカ(クララ・トラモンターノ)とカティア(ロベルタ・マッティ)というキャラクターが登場し物語を盛り上げる。 “青い子供”を束ねるアンジェリカは、幼い頃に友人を高所から突き落とし、その子が亡くなっても平然としているような性格の持ち主で、人の心がないような冷徹な人物だった。そんなアンジェリカは、アンナが蛇に噛まれた際、なんとアンナの片腕を切り落としてしまう…。実際に切断のシーンは映し出されていないものの、アンナの悲痛な叫びやアンジェリカの平然とした態度は、非常に印象に残るシーンとなっている。 またアンジェリカと一緒にいるカティアは、この世界で生存する唯一の“大人の女性”。実は“ある理由”で感染せずに生き残ることができたのだった。彼女は常にアンジェリカの身の回りの世話をしていたものの、アンジェリカの非道なやり方に疑問を抱き始める。 一方で、アンジェリカはカティアが大人になっても感染しないことから、“自分も助けてほしい”と懇願していた。アンジェリカほどの非道なキャラクターでも、死に対する恐怖心を持っていたのだ。 そんなある日、「アンジェリカが儀式でカティアを燃やし、彼女の灰を食べることで永遠に感染しない体を手に入れる」という話を聞きつけたアンナは、カティアと共に“ある行動”に走る。13歳の少女が生き抜くために取ったこの行動に対し、ネット上では「残酷すぎる世界…」といったコメントが寄せられた。 その後アンナはやっとのことで“青い子供”の集団を抜け出し、ピエトロの元へと向かう。 ■「エトナ火山に行きたい」とピエトロが懇願する理由とは… 第5話からは、クライマックスに向けたシーンが畳み掛けるように描かれている。アンナがピエトロの家に向かうと、ピエトロはすでに“赤い病”に侵されぐったりとしていた。ピエトロは気力を振り絞り「エトナ火山に行きたい」とアンナに頼む。 続く回想シーンでは、ピエトロが小さい頃、母親が亡くなった後、サヴェリオという男性と一緒に暮らしていた様子が描かれる。サヴェリオとピエトロは生き抜くために、“赤い病”で苦しむ大人たちを楽にし、生活に必要な物品を拝借して回っていた。 幼いピエトロは善と悪も分からずただサヴェリオの言うことを聞くしかなく、サヴェリオの言う「人は死んだら魂はエトナ火山へ向かい、その火口から新しい世界へ旅立つ」という言葉を今でも信じていた。そのため自分に死が近づいていることを知っていたピエトロは、火山に行くことで魂を解き放ち、新しい世界に旅立とうとしていたのだ。こうしてエトナ火山に向かうことにしたアンナとピエトロだったが、その道中でさまざまなトラブルが発生することとなる…。 ■さまざまな出来事を通してアンナが成長していく姿にも注目 最終話では、アンナとアストルがエトナ火山から見えた“イタリア本土”を目指して旅に出る。シチリア島から本土へ小さなボートで向かう道中、偶然“ある出来事”が起きて物語は完結。ラストシーンでは、新たな希望を見いだせるような描写が映し出された。 本作は、アンナたち姉弟を通して“病の恐ろしさ”や“子供たちの真っすぐがゆえの痛々しさ”がひしひしと感じられるストーリー構成となっている。主演の2人がほとんど演技未経験であることから、フレッシュなまぶしさや素直でリアルな反応が楽しめる。また、集団の中での“孤独”や“大切な人の死”などによって、アンナが成長していく姿も見どころの一つと言えるだろう。