48歳のカズが今季最年長弾を連発している理由とは?
ゴールへの嗅覚に導かれるままに体が反応した。ホームにV・ファーレン長崎を迎えた19日のJ2第8節。均衡を破ったのは横浜FCの背番号11、カズことFW三浦知良だった。 前半12分に右サイドで得たFK。キッカーのMF佐藤謙介の照準は、ファーサイドにそびえる190cmの長身FW大久保哲哉に定められた。 ジャンボの愛称を持つ大久保が数人に囲まれながら、ヘディングでゴール前へ折り返す。カズはすでに、あうんの呼吸でニアサイドへ走り込んでいた。 「僕はジャンボを100%信頼して、こぼれ球や折り返しを常に狙うようにしているので」 長崎のDF刀根亮輔とポジションを争いながら、次の瞬間、カズはバックステップを踏む。密集地帯で巧みにノーマークとなり、ジャンプ一番、ヘディングでボールをとらえる。相手GKが一歩も動けないシュートが、鮮やかにゴールに吸い込まれた。 5日のジュビロ磐田戦に続く、今シーズン2度目のカズダンス。自らの持つJリーグ最年長ゴール記録を48歳1ヵ月24日に更新したカズが喜びを打ち明ける。 「ああいう場面では、DFはどうしてもボールを追うからね。上手く裏に走り込めた。相棒のジャンボからいいボールがきたので、半分以上は彼のゴールだと思います」 左足のつけ根の痛みが長引いた昨シーズンはともに途中出場で2試合、合計でわずか4分間の出場に終わった。もちろん無得点。最悪のシーズンを送った男が開幕からコンスタントに先発出場を果たし、チーム最多タイの2ゴールをあげている。 再び眩い輝きを放つようになった背景には、自分自身と繰り返している「対話」があった。神妙な表情を浮かべながら、カズが打ち明ける。 「年齢のことや肉体の衰えは、本来ならば自分から言うべきことではない。それでも、自覚してやらなきゃいけないこともある。28歳の選手と比べて20歳も違うわけですから、スピードでは勝てない。だからこそ一瞬の考えるスピードやポジショニング、ペナルティーエリア内での駆け引きで勝負しないと」 ゴール前以外ではシンプルなプレーに徹し、いざという場面のために力を蓄える。生涯現役を宣言してきたカズが、自らの年齢や衰えについてここまで言及するのは初めてと言っていい。 「いまの僕は余計な体力を使って、ゴール前に入っていけなくなることが一番ダメですから」 30年のキャリアのなかで培われてきた得点感覚を、最大限に発揮させたカズのゴール。日本代表でともに戦った盟友で、現在は長崎を率いる高木琢也監督も脱帽するしかなかった。 「昔みたいにドリブルでガツガツ仕掛けてこない。プレーが整理されている」