野村克也が語る「スランプ」
スランプは一流選手のみが使っていい言葉
スランプという言葉を使ってもいいのは長嶋茂雄/写真=BBM、王貞治といった超一流選手だけだ
プロ野球界でよく使われる言葉に、スランプがある。 「今季、長いスランプに陥っている○○(選手名)」 「○○がスランプ脱出の一打!」 選手もマスコミも、すぐこの言葉を使いたがる。しかし私は、スランプという言葉を軽々しく使う連中に、腹が立って仕方がないのだ。 監督時代も、「スランプです」などと選手が発するたび、こう言って叱った。 「何がスランプや。スランプっちゅうのは、一流選手のためにある言葉や。お前がスランプなんて言うな!」 私は、力のある選手がその力を出せないときに使う言葉がスランプだと思っている。つまり、一流選手のみ用いる資格のある言葉。私の時代なら、王貞治、長嶋茂雄(ともに巨人)クラスで初めて言える言葉である。だから私は現役時代、自らスランプという言葉を使ったことは一度もなかった。 もともと力のない、二流選手にとっては『調子が悪い=スランプ』ではない、ということだ。二流選手の「調子が悪い」のは、単にその選手が未熟、実力不足なだけ。『未熟とスランプの勘違い』である。 勘違い以上に悪いのは、スランプが現実から・・・
本文:1,692文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
週刊ベースボール