2020年「城観光」の勢力図は?……名古屋や江戸に天守閣の木造再建への動き
小田原や駿府にも動き、文化庁が後押し
東京では認定NPO法人「江戸城天守を再建する会」が中心となり、1657(明暦3)年の大火で焼失して以来、一度も再建されていない江戸城寛永度の天守を2020年までに造ろうと提案。費用を350億円と見積もって、すでに寄付を呼び掛け、CGの「復元図」を公開するなどして機運を盛り上げています。 文化庁記念物課によれば、全国で天守閣の木造再建が検討されている国指定の特別史跡は江戸、名古屋と神奈川県の小田原城。国指定以外では2004年に愛媛県の大洲城が、近年の建築基準法下で初めて木造再建を果たしたのをはじめ、静岡県の駿府城にも動きがあると把握しているとのこと。 木造天守が求められる背景には、昨今の城ブームに加えて法整備や建築技術の向上、そして文化庁の意向があります。 「正式な通達などを出しているわけではありませんが、史跡を建て替えるなら本物に近づけるべきだというのが文化庁の方針。実際には地元から現状変更の申請を受け、国の審議会などを経て文化庁長官が認めます。地元でしっかり計画が練られていれば1、2年で認可が下りるでしょう」と担当者。
財政的にも設計的にも厳しい?
河村市長は天守焼失の日付にかけて、「2020年の5月14日に竣工式をしたい」と懇談会でも明言しました。今後、専門家による検討会を設けて早期に方針を決め、整備に着手するとみられます。 ただ、名古屋に再建を主導するNPOや市民団体はなく、議会の中でも「長期的には必要かもしれないが、減税をして市財政に余裕のない中で今すぐ賛成できるものではない」という声があります。もちろん木材や職人の確保などの問題もあり、一筋縄でいくとは限りません。 ある業界関係者は「工事自体は1年半ぐらいで終わるだろうが、基礎や内部の見せ方などの検討に時間がかかるだろう。2020年までに竣工はもうギリギリ。上棟式ができていればいい方なのでは」と見通します。 5年後、城観光の勢力図はどうなっているでしょうか。 (関口威人/Newzdrive)