《割とノーテンキなんですよ》芸歴66年・石坂浩二インタビュー「若さの秘訣? そんなものはないけど、何事も気負わないでやるのが長続きしていいのかな」
集中できるものがあると“生きる力”になる
そしてもうひとつ、石坂が意識していることがあるという。それは“集中する時間をつくる”ことだ。 「ぼくは料理も好きだし、絵を描いたり、プラモデルを作ったり、読書をしたりするのも好き。集中できることが好きなんです。集中できるものがたくさんあるとそれが“生きる力”になる。キャンバスも本もプラモデルも出しっぱなしにしておいて、どんなに忙しくても毎日ちょっとずつやっています。しまい込むとやらなくなるから(笑い)」 テーブルを4つ置き、それぞれの趣味の道具を並べ、その日の気分でいずれかに没頭する。中でもいまはプラモデルに夢中だという。 「プラモデルとの出会いは小学生の頃だから、モデラー歴は70年以上。俳優業より長いね(笑い)」 いま再びプラモデル作りに熱が入るのは、2009年にプラモデルクラブ「ろうがんず」を結成したから。 「この当時、仕事をリタイアした60代の友人たちに会ったのですが、仕事ばかりで何もやってこなかった彼らは、それまでと大きく生活が変わり、元気がなくなっていました。そういう人たちも子供の頃はたいてい、プラモデルを作ったことがあった。ではまた作ってみたらいいのでは?と思って結成しました」 現在、会員は15名。石坂の妻もメンバーの一員で、一緒にプラモデル作りを楽しんでいるという。
「船舶や車など、皆それぞれ自分の好きなものを作っています。ぼくが作るのは飛行機。資料を読んだり、飛行場で実物を眺め、塗装がどうなっているか観察したりするのも楽しいんですよ。細かな作業は女性の方が上手なので、部分的に妻に手伝ってもらうこともあります」 定期的に展覧会も開催しているそうだ。 「若さの秘訣? そんなものはないけど、何事も気負わないでやるのが、長続きしていいのかな、と思いますね。ひとりで続けるのは大変だから、月1回でも仲間と集まって作る。いまはこれが楽しいんですよね」 次は3Dプリンターを使おうか、同じ飛行機をもっと凝って作ろうかなど、やりたいことが尽きない石坂。その姿勢が周囲を魅了し、仕事にもつながるのだろう。 (了。第1回から読む) 【プロフィール】 石坂浩二(いしざか・こうじ)/1941年、東京生まれ。高校在学中の1958年、テレビドラマ『お源のたましい』(KRTV・現TBS)にエキストラ出演。演出家の故・浅利慶太さんに誘われ、慶應義塾大学法学部卒業後、「劇団四季」へ入団。1963年の『花の生涯』を皮切りに『天と地と』(1969年)、『元禄太平記』(1975年)、『草燃える』(1979年)などNHK大河ドラマに多数出演。1976年には映画『犬神家の一族』(東宝)に主演し、以後、市川崑監督作品の“顔”に。作家、司会者、ナレーターなどでも活躍。2009年NHK放送文化賞を受賞。画家としては1974~1985年まで二科展に連続入選。 【今後の出演情報】 映画『海の沈黙』 脚本家・倉本聰さん(89才)が半世紀以上温めていた構想を映画化。贋作絵画を巡る人間模様を描く。主演は本木雅弘(58才)。石坂は著名な画家役で出演。11月22日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ)。 NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』 2025年1月5日から放送予定。江戸時代の“出版王”とされる蔦屋重三郎の生涯を描く。主演は横浜流星。石坂は徳川吉宗・家重・家治の将軍3代に仕えた老中首座・松平武元役。 取材・文/上村久留美 撮影/政川慎治、平野哲郎 ※女性セブン2024年10月24・31日号
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