漢族頼りの商売で遊牧民経済は打撃……物価上昇に合わない家畜の値下がり
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚しい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
モンゴルの秋といえば、日本と同様に収穫の秋である。遊牧民は春に生まれた仔家畜を売り、現金収入を得る大切な季節で、この秋の家畜の買い取り価格はとても重要である。 近年、中国において、物価が年々上がっているのに対して、家畜の値段はどんどん落ち、遊牧民の経済を打撃している。 遊牧民は生産者ではあるが、家畜の売買は長年、漢族の商人に頼るしかなかった。市場では羊肉1キロが1000円以上で売られているのに対し、彼ら遊牧民から買いつける際は、一番安い時には1キロ300円以下で取り引きが行われたこともあった。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第5回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。