悲願の銀メダルを獲得した高木美帆の涙の理由とは?
平昌五輪のスピードスケート、女子1500メートルが12日、江陵オーバルで行われ、高木美帆(23、日体大助手)が1分54秒55でスピードスケートの個人種目としては日本女子史上初となる銀メダルを獲得した。この種目では橋本聖子以来、26年ぶり。女子のスピードスケートでも1998年の長野五輪の500メートルで銅メダルを獲得した岡崎朋美以来、20年ぶりの快挙となった。最終組で滑った高木は、レース終了直後、ヨハン・デビットコーチと抱き合って号泣したが、その涙の理由は? スケート大国オランダの“女王” イレン・ブスト(31)が、先に1分54秒35の好タイムを叩き出していた。だが、高木は、そのレースを見ないようにしていた。 「直前までタイムは知らなかった」 最終14組で、アウトに高木、そしてインには、世界記録保持者ヘザー・ベルフスマ(米国)。緊張のスタートを前に高木は、雑念を覚えた。号砲が響くと、わずかにフライングを犯した。だが、高木は、そのミスで気持ちがリセットできたという。 「フライングは『落ち着けってことだな』ととらえた」 序盤はベルフスマに先行されたが、300メートルの通過は、25秒50。ブストを上回る金メダルペースだった。ベルフスマとの競り合いでさらにスピードに乗る。最後のカーブ付近でマークしていたベルフスマを捉えると、一気に前に出て引き離す。後はブストの記録との勝負になったが、わずか0.20秒届かなかった。 高木はゴールすると天を仰いだ。だが、デビットコーチの顔を見ると抱き合って号泣した。 15歳で出場したバンクーバー五輪では、天才少女と騒がれたが、ソチ五輪では代表から漏れ、挫折を味わった。そこからもう一度、真剣にスケートと向き合い、今季のワールドカップでは、4戦4勝。スポーツイラストレイテッドは、恒例の五輪メダル予想で高木をこの種目の金メダル候補に予想していた。 その涙には、8年越しに果たしたリベンジの喜びと、支えてくれた人々への感謝、プレッシャーからの解放。そして金メダルを逃した悔しさ。あらゆる感情が入り乱れていた。 表彰式を終えた高木が口を開く。 「表彰台にたってみて、一番が取れなかったという悔しい思いがこみあげてきた。うれし涙というよりは悔し涙の方が強い。でも、この日だけが特別ではなく、今までソチ五輪が始まる前からいろんな方に支えていただき、こみあげてきた気持ちもある」 涙の理由は、直後は喜びであり、時間の経過と共に悔しさへと変わったのだろうか。。 実は、海外のメディアも、高木の涙の理由に注目していた。 国際スケート連盟(ISU)の公式サイトは、歴代最多メダルの獲得となったブストを称える記事の中で、高木についても「うれしさと失望」という“小見出し”をつけて涙の様子を伝えた。 「高木はゴール後に笑みを浮かべたが、直後に涙があふれた」と描写。 「2位を確認したとき、メダルを取れたことで、とてもうれしかった。多くの人が応援してくれ拍手を送ってくれた。とても大きな支えになった。だが、同時に金メダリストと自分の違いも感じた。今シーズンのワールドカップを勝てたので、確かな自信になっていた。でも五輪は違うとわかっていた。五輪を迎える際に修正しなければならないこともあった。嬉しいが同時に失望もある」という高木のコメントも紹介した。 表彰式を終えると、涙は乾いていた。 高木は「嬉しさ」ではなく「失望」を次なるエネルギーに変えたようだ。 「まだ大会は終わっていません。金メダルを取れなかったという気持ちが強いんですが、1000メートルとパシュートで勝てないとは思っていない。オランダ勢も同じ人間です。自分たちもできます。しっかりと準備してチャレンジャーとして戦いたい」 銀メダルの余韻に浸っている時間はなく14日には1000メートル、19日には女子のチームパシュートが待っている。 米国のNBCスポーツも 「高木は、日本の女子スピードスケートで4つ目の五輪メダルを獲得した。高木と、小平奈緒は平昌五輪で、この合計数を、さらに引き続き増やすことになりそうだ」と、今後のメダルの可能性が高くなったことを報じている。