リサーチで意外な結果が!インバウンド・オタク客が本気で買い求める「ニッポンのおみやげベスト10」
今年に入り新型コロナ禍が一段落した後、一大観光地として来訪者を増やしている秋葉原。そこには日本独特のオタク文化に興味をもつ外国人オタク客が多数、訪れている。彼らは一体何を求めて、アキバに来ているのだろうか? リサーチを開始すると、日本人とは少し違う面白い側面が見えてきた。 【思わず二度見】インバウンド・オタク客に「一番人気」のニッポン土産はこれだ! ◆陽キャの欧米系、指名買いのアジア系 秋葉原で3店舗、他にも各種系列店のある、DVD/Blu-ray、本、フィギュア、雑貨、トレンドアイテム、アダルト関連、といったさまざまなアイテムを取り扱い、インバウンド客にも人気の「買取販売市場ムーランAKIBA本店」の阿部将太店長に、各店舗からの情報を募った上でインバウンド・オタク客が求める“ニッポンのおみやげベスト10”を聞いた。 ――現在、秋葉原に集う人々には、どんな人・年齢層・国の人が多いですか? 「秋葉原に集まるオタクの流れとして、まず’00年代中頃に『電車男』人気に端を発したブームがありました。その後、中国人の爆買いと呼ばれた現象が10数年ほどと結構長く続いたのですが、新型コロナ禍によって秋葉原から人が消え、中国・韓国系の方々の姿も見えなくなりました。その次に〝スクイーズ系〟〝フィジット系〟と言われる柔らかくてフワフワした、さまざまな触り心地を楽しむおもちゃのブームがきて、それで日本人の低年齢層の子どもたちがすごく集まった時期がありました。そして新型コロナ禍が明けると、今まで我慢してた海外の人たちがドワーッと勢いを増して戻ってきました。感覚的に今、インバウンド勢は日本人の3~4倍来ています。 アニメグッズを買う欧米の方が確実に増えており、今多いのはフランス、アメリカの欧米系です。アジア系の3倍くらい来ている印象です。欧米系のお客様は、陽キャ的なノリで、みんなでお店にいらっしゃって〝これいいじゃん〟〝お前、あれ買えよ〟みたいに楽しみながら買っていく傾向があり、中国・韓国系のお客様は〝◯◯というのに出ていた◯◯というキャラクターの◯◯をください〟というふうに、はっきり目的を持って指名買いをする方が多いという印象がありますね」 ◆3000円のDVDの特典チェキが数万円にも! ――それでは、10位からお願いいたします。 「10位はセクシー女優の関連商品です。DVDなどの映像作品本体もさることながら、メーカーが公式で出している女優さんの生写真が人気です。なかでもぶっちぎりの人気は〝セクシー女優さんのチェキ〟ですね。台湾やアジア系のお客様に特に人気です。転売目当ての方もいるようで3000円で買ったDVDに特典としてついてくるチェキが、海外では数万円で売れるそうです。チェキは基本、その場でその時に撮った1枚しかないから希少性があり、コレクション性も高い。日本の’90年代~’00年代の文化を感じさせるようで、日本文化への憧れと合わさって、人気となっているようですね。特に台湾の人の視線が熱い。台湾で日本のセクシービデオのイベントが行われると大人気だそうで、そこから“日本の秋葉原に行こう”と盛り上がって、やって来ている方々がいらっしゃいます。 アダルトくくりで補足すると、ローションやコンドームといったものは、品質が高い上に安価なので、お土産としてすごく人気みたいです。TENGAも大人気ですね。海外、特に欧米系の方はオナホールという文化に馴染みがないらしくて、使い方が分からず店頭でパッケージを剥いちゃう人もしばしばいます(笑)」 ――アジアで日本のAVが大人気、とは昔から言われますが、その人気は健在なんですね。では次、9位は何になるでしょうか? 「食玩です。昔流行った〝チョコエッグ〟のように、食品におまけという形でフィギュアなどのおもちゃがついている商品です。食玩にもさまざまな種類があるのですが、900円くらいのちょっと高級路線のものが売れています。どんなおまけがついている食玩が売れるかというと、キャラクターものも人気ですが、高度経済成長期やバブルの時代のカルチャーをミニチュアにした〝昭和レトロもの〟が大人気です。 昭和の看板や黒電話、純喫茶の内装などを再現した商品の人気が非常に高いです。昭和レトロのアイスを再現した食玩も売れています。欧米系の方々に人気が高いのが特徴です。’70~’80年代のデザインや色使いが刺さるようなんですよ。日本の文化への憧れがあるのかもしれませんね」 ――数十年前、しかも日本という、そんな世界を知らないはずの外国人の方に〝昭和〟が刺さるというのは不思議ですね。8位をお願いします。 「一番くじですね。一番くじはコンビニなどでも売っていますが、何百円か払ってくじを引いて、引いたくじに合った番号や記号に対応した商品をもらう、という商品になります。『ドラゴンボール』など人気作品のものが強いです。 売れ始めたのは最近で、3~4年前は外国人の方には一番くじのシステムが知られておらず、くじの賞品だけ見て〝これとこれをPlease〟みたいに言われて、そのたびに『これはくじの景品なんです』と説明していました。それが、新型コロナ禍が一段落してインバウンド客が戻ってきた頃には認知が進んでいて、彼らが一番くじのシステムを理解していたんですよ。最後のくじを買うとラストワン賞がもらえる、みたいなお約束も理解していて、くじを楽しんでいる感があります。 最近印象的だったのが、広い世代に馴染みの深い画材『サクラクレパス』に関したものをデザイン化したバッグやタオルが当たる一番くじがあるのですが、それをアリペイ支払いで一人でほぼ買い占めたアジア系の方がいました。サクラクレパスのデザインは外国にも届いているんだな、と不思議な気持ちになりましたね」 ――なるほど、インバウンド客の〝大人買い〟はいまだに豪快なんですね。それでは7位は? 「ソシャゲグッズです。今強いのは『勝利の女神:NIKKE』『原神』『ブルーアーカイブ』といった中国系のソシャゲのキャラグッズですね。中国系のゲームの商品ではありますが、西洋系の方々にもすごく人気があります。フィギュア、キャラクターが描かれたアクスタ・アクキー(※アクリルスタンド、アクリルキーホルダーの略)、缶バッジなど、定番商品がどれも人気で、中でも売れるのが、昔はやったビックリマンチョコのような、おまけシールとチョコウエハースが入っているお菓子です。キャラクター商品を買いやすい値段で気軽に買えるのが人気なようです」 ――6位をお願いします。 「日本のゲーム関連グッズです。各国のインバウンドのお客さんに人気があるのは任天堂。Switchの本体はもちろん、グッズもすごいですね。『ポケモン』『ゼルダの伝説』それとやはりマリオ関連は特に人気です。Switchのゲームと連動するフィギュアの『amiibo』は棚に並べばすぐに売れてしまいます。ぬいぐるみの人気も高いです」 ――いよいよベスト5です。 「5位は“レトロゲーム”ですね。最新のゲームも人気ですが、外国人を引っ張ってきてくれるのはレトロゲームです。ウチの店でもファミコン、スーパーファミコン、ゲームボーイ、ゲームボーイアドバンスといった、任天堂系のレトロゲームが強いです。レトロゲーム熱はだいぶ前からありましたが、最近ますます加熱している感じです」 ――他の店舗の店長さんから「商品を並べたそばから売れる」「高めの値段をつけても売れるから、転売屋とか関係なく、店頭価格がどんどん上がり続けている」と聞きました。では、4位をお願いいたします。 「〝特撮もの〟です。『ゴジラ』関連商品の人気が圧倒的ですね。『シン・ゴジラ』の頃から人気はあったんですが『ゴジラ-1.0』が外国でも受けた、という流れがあり、『ゴジラ-1.0』の登場から人気が爆上がりしています。人気のジャンルは、やはり映像ソフト。次いでフィギィア。あまり当店では取り扱いがないのですが、ソフビも人気です。フィギュア系は数千円する商品でも円安で本国で買うより激安なので飛ぶように売れます。ゴジラには、メカゴジラ、キングギドラ、モスラといった人気怪獣がたくさんいるのですが、ゴジラが一番人気です。 次に人気があるのが『ウルトラマン』系です。中国系を中心に高い人気があります。現在も日曜日の朝枠で放送され続けている『スーパー戦隊』もの、『仮面ライダー』シリーズも安定した人気があるのですが、『ウルトラマン』はそれらのジャンルと比べて5倍は売れている印象ですね。外国人、特に中国人からの人気が高い。インバウンドの方々は怪獣が好きなんだな、と」 ――怪獣作品は昭和から続く日本特撮の王道ですものね。では、第3位をお願いします。 「Vチューバーグッズです。ホロライブ、にじさんじといった大手事務所のVチューバー系のグッズが強いです。日本人のVチューバーファンと違うのは、個人まで追いかける人はあまりいないというところだと思います。今のところ大手芸能事務所に所属している、日本ですでに人気を確立しているVチューバーさんが人気で、おそらくなのですがVチューバーに関してのインバウンドの方々の感覚は『今日本で最新の流行をいち早く追いかけて、現地でグッズを買う』という感覚かな、と感じています」 ――意外なジャンルがベスト3入りを果たしていました。2位をお願いします。 「日本のアニメ関連のグッズです。『ドラゴンボール』『ワンピース』『NARUTO』、といったジャンプ系の王道作品が強いのですが、面白いのはインバウンドの方は、5~6年、さらにもっとずっと昔の作品が好きだということ。特に『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』などは最近、新作アニメや実写版が公開されるなど今でもメディア展開が続いていることもあり、人気が目立ちますね」 ――てっきり、アニメが1位だと予想していました。 ――てっきり、アニメグッズが1位だと思っていました。首位に輝いたおみやげは何だったのでしょうか。 「栄えある1位は千社札です。神社などで買える木札で、日本に昔からあるものですが、千社札の形で外国人の名前を『阿理子(アリス)』『安堵龍(アンドリュー)』『大亜奈(ダイアナ)』、といったように漢字で当て字にしたものが、飛ぶように売れています。千社札にどんな意味があり、日本でどう扱われているものなのか分かっていないと思いますが、圧倒的に売れています。日本でしか買えないものでしかも、1000円しないというのが決め手なのでは、と思います」 ――総括をお願いいたします。 「日本で数年前に流行ったものを、今、秋葉原に来ているインバウンドの方々は求めている、ということです。最新商品をおみやげとして渡しても、もしかしたらあまり響かないのかもしれませんね。ジャンプ系の強さが目立ちますが、『名探偵コナン』『進撃の巨人』といった、サンデー、マガジン系も人気があります。それからロボットもの、中でも『機動戦士ガンダム』はもちろん人気で、映画が最近公開された『機動戦士ガンダムSEED』関連は売れています。ガンプラもウチではそれほど取り扱いがないですが、仕入れがあればよく動きます。エアガンなんかもかなり需要があります。 今のインバウンドのオタクのお客様には、昔の日本人オタクが持っていた熱さがあると感じるんです。自分の国では売っていないアイテムを求めて日本のこの店にやって来て、やっと見つけて本当に嬉しそうな顔をしますし、作品に対しての入れ込みや愛情がすごいんですよ。今、日本に元気がないので、外国人がそういう熱を見せてくれるのは、嬉しく感じます」 アニメ&ゲームカルチャーの最新文化を求めながら、日本のレガシーが生きたグッズも求める、という外国人心理。ここをとらえられれば、外国人の友達やビジネス相手の心をぐっと掴むことができるかも? 撮影・文:来栖美憂(くるす・みゆう) フリーライター。人文、社会問題、サブカルチャーなどを主な守備範囲とし、雑誌・新聞・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。
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