走る加越線、映画で復活 茨城で保管の車両撮影 13日から高岡で上映
●所有の金大出身医師・諸岡さん出演 ●砺波平野住民の足 1972(昭和47)年、廃線となった加越能鉄道・加越線の気動車(ディーゼル車)の走る姿がインディーズ映画でよみがえった。茨城県小美玉(おみたま)市の病院敷地で保管されている車両を撮影し、CGなどを駆使して昭和の茨城を再現した。気動車を所有する病院相談役の諸岡信裕さん(76)=金大医学部出身=は運転手役として出演し、「富山と茨城の大切な足がよみがえった」と感慨深げ。映画は13~26日、高岡市の御旅屋座(おたやざ)で上映される。 加越線は現小矢部市の石動駅と現砺波市の庄川町駅を結び、砺波平野の多くの通勤通学者が利用した。加越線の廃線後、気動車は茨城県の「鹿島鉄道」に譲渡されて活躍したが、鹿島鉄道も2007年3月に廃止となった。 運転手役として映画に出演した諸岡さんは「小学校の頃から列車の運転手になるのが夢だった。夢がかなったようだ」と喜んだ。諸岡さんは昔から鉄道が好きで、金大生時代に帰省の時、加越線の車両を見た記憶があり、鹿島鉄道廃止後、「後世に残したい」と気動車を購入した。 気動車が登場する映画「石岡タロー」は昭和の茨城に実在した犬の物語。飼い主と一緒に鹿島鉄道に乗ってしまい、石岡駅で離ればなれになったタローが飼い主を探して17年間、石岡駅に通い続けた。物語に感銘を受けた有志が協賛金を集め、自主制作した。 すでに廃線となった鹿島鉄道を再現するため、諸岡さんが協力し、乗車するシーンや列車内の場面は実際の車両で撮影し、当時の記録映像やCGで走行する様子を再現した。映画は2022年に完成し、23年から全国で上映している。脚本・監督の石坂アツシさんは「生き生きとよみがえった気動車の姿をどうぞ劇場でご覧ください」とコメントした。 ★加越線 全長19・5キロ。小矢部市の石動駅から同市津沢を通り、福野駅付近で中越線(現JR城端線)を立体交差で横断し、井波を経て庄川町に至った。1915(大正4)年に福野―青島町、22(同11)年に石動―福野が開通。当初は蒸気機関車が走り、後にディーゼル車を導入した。砺波軽便鉄道として創立し、加越鉄道、富山地鉄加越線、加越能鉄道加越線と変遷し、72(昭和47)年の廃止までの57年間、地域の産業を支え、住民の足となった。