イランの大規模攻撃にイスラエルは100倍返しか?懸念される3つの原油高騰リスク
イランのイスラエルに対する大規模攻撃を受けて、中東情勢の泥沼化に対する警戒感が高まっている。 イスラエルが報復攻撃に出れば、イランとの直接的な戦争に発展しかねず、原油市場は大混乱に陥りかねない。 今後、懸念される原油高騰を招く3つのリスクとは。(JBpress) (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー) 【写真】イランとイスラエルは直接的な戦争を始めるのか イランは4月13日夜から14日未明にかけて、イスラエルに対して300以上の無人機やミサイルによる大規模攻撃を行った。「1日のイスラエル軍による在シリア大使館空爆への報復だ」としている。 今回の攻撃でイスラエル側に大きな被害が出ていないとみられているが、イラン国内からの直接攻撃は史上初めてだ。 イランは現時点で、今回の作戦は限定的でさらなる事態の悪化を意図していないという姿勢を示している。国際社会はイスラエルの今後の対応に注目している。 イスラエル戦時内閣が14日に開いた閣議では「イランへの反撃」に支持が集まったが、時期や標的、方法で一致できず、結論には至らなかったようだ。 米バイデン政権などはイスラエルが自制することを望んでいるが、イスラエルのこれまでの行動にかんがみれば、自らが被った攻撃の「10倍返し(場合によっては100倍)」をする可能性も排除できないだろう。 イスラエルとイランの直接対決のリスクが生じたことで、市場関係者の間では「原油価格は上昇する」との観測が生まれている。 今後の情勢は定かではないが、中東地域の地政学リスクが現実になる可能性が高まっていることは間違いない。本コラムでは筆者が懸念する「3つの原油価格高騰リスク」について述べてみたい。
■ 原油高騰を招く3つのリスク 最初のリスク要因は「イスラエルによるイランの石油施設攻撃」だ。 ウォール街の一部の関係者は既にこのリスクを意識し始めている。 イランへの攻撃は支援しないと米国が表明している状況下で、イスラエルにとって有力な選択肢として浮上しているのがイランの石油施設への攻撃だ。 産油国への攻撃が効果的であることはウクライナが証明している。度重なるドローン攻撃によりロシアの製油能力を15%喪失させ、ロシアの継戦能力に打撃を与えている。 イランの昨年の原油生産量は前年比44万バレル増の日量約300万バレル。米国の制裁により苦境に陥っているイラン経済にとって、原油から得られる収入は「頼みの綱」だ。 石油施設を攻撃するだけでイランに大損害を与えることができるというわけだ。