波乱の米大統領選に突入、トランプ氏「有罪評決」の真相 深まる分断「5年以内に内戦に陥る可能性」も不可避か
【ニュース裏表 峯村健司】 筆者は最近、11月の米大統領選について、テレビやラジオで解説を依頼される機会が増えた。ワシントン特派員として2016年の大統領選を取材したほか、ドナルド・トランプ大統領を間近で見てきたからだ。 ある番組で、もしトランプ氏が勝利した場合のシナリオを話して以降、「もしトラ専門家」と言われることも増えた。 2日放送のBS朝日「日曜スクープ」に出演し、「もしトラ」について解説した。メインテーマは、5月30日に下されたトランプ氏が不倫の口止め料を不正に処理したとされる事件の裁判における有罪評決だった。 量刑を決める審理は7月11日に開かれることが決まったが、評決後、トランプ氏は「不正で恥ずべき裁判だ」と述べたうえで、ジョー・バイデン政権が政治的な意図を持って司法を利用したと批判をした。 大統領経験者への有罪評決は初めてのことだ。しかも公判では、不倫相手の女性であるポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏が、トランプ氏との関係について洗いざらい証言したことで衝撃が走った。日本メディアは、「大統領選に影響も」といった否定的なトーンで報じていた。 だが、トランプ氏を間近で見てきた筆者は、こうした見方は一面的に過ぎないと感じている。トランプ氏の底力を過小評価しているからだ。 5月中旬に米公共放送PBSとNPRが実施した世論調査で、「有罪評決が大統領選の投票にどのような影響を与えるか」と尋ねた。「トランプ氏に投票する可能性が下がる」と答えたのは17%のみで、67%が「投票に影響ない」とし、「投票する可能性が上がる」と回答した人も15%いた。その他の世論調査をみても、今回の有罪評決の影響が限定的であることを示している。 むしろ、記録改竄(かいざん)という形式犯が問われたことに対し、一連の捜査を「魔女狩り」と批判するトランプ氏の主張を後押しする結果となったようだ。陣営の発表によると、評決後24時間で、5280万ドル(約83億円)の献金が集まったという。 トランプ氏は今月2日に放送された米FOXテレビのインタビューで、今回の裁判で自宅軟禁されたり収監されたりする可能性を問われると、こう答えた。