写真：HOMINIS

レディー・ガガがいないーー。 レディー・ガガが主演を務めた映画「ハウス・オブ・グッチ」には、シンガーソングライターとして世界中を熱狂させるあのガガが、奇抜なファッションやパフォーマンスでいつも驚かせてくれるあのガガが、どこにもいない。この作品には「したたかな野心家」がそこにいる。 【写真を見る】 世界的高級ブランド「グッチ」創業者一族の30年間の確執や崩壊を描いた本作。舞台は1978年のイタリア、運輸会社の経理として働くパトリツィア(ガガ)は、誘われたパーティーで、グッチ創業者の孫・マウリツィオ(アダム・ドライバー)と出会う。やがて2人の恋は燃え上がり、「財産狙いだ」という彼の父・ロドルフォ(ジェレミー・アイアンズ)の反対を押し切って結婚へ。 こうしてグッチ一族に潜り込んだパトリツィアは、家族をうまくコントロールし、トップに上り詰めようと暗躍する。新しい血として彼女が入ったことで、グッチ一族の運命の歯車が狂い始めて...。そして物語の終盤。あることをきっかけに、パトリツィアが夫の暗殺計画を企てる！ 実話をもとにした人間ドラマとしても楽しめる本作だが、何より注目してほしいのは、パトリツィアを演じたガガの演技である。イタリア語なまりの英語を半年かけて習得し、22歳から49歳までの彼女の人生を違和感なく演じきったガガ。徹底した役づくりの甲斐もあってか、「ニューヨーク映画批評家協会賞」主演女優賞、「第79回ゴールデングローブ賞」主演女優賞ノミネートなど、数々の映画賞で評価を受けている。 そんなガガの演技を見ていると、パトリツィアの本当の想いはどこにあったのか...と、考えてしまう。 例えば、パトリツィアとマウリツィオが、パーティーで出会ったシーン。彼が「マウリツィオ・"グッチ"」と名乗った際、明らかにパトリツィアの目の色が変わった。その後、彼女の猛烈なアプローチで2人は交際に発展。結婚までこぎつける。 ここだけを見ると「最初から財産目当てだったのか？」と思うのだが、パトリツィアは結婚後も頼りない夫を「なんとかしよう」と尻を叩く動きを見せている(自分のためというのも大きいだろうが)。彼女の一挙手一投足を見ていると、暗殺計画に至る前は「本気で夫を愛していたのではないか」とすら感じるのだ。「ハウス・オブ・グッチ」は、そんな登場人物の心理状態を推理しながら観るのも楽しい。 その他にも、パトリツィアが身につける煌びやかな洋服やアイテム、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、サルマ・ハエックなど脇を固める豪華俳優陣の演技など、見どころは盛りだくさん。映画「ハウス・オブ・グッチ」は、洋画専門チャンネル ザ・シネマで7月13日(木)ほかに放送される。 文＝浜瀬将樹