森保J、最終予選に向けて感じる「不安要素」 主力組の移籍、監督交代…9月に戦力不透明【コラム】
最終予選は決して楽な道のりでない…引いて守る可能性も
加えて言うと、新シーズンからはCLが新方式になり、グループステージの試合数は6から8に増える。ELなども同様に変更があるため、そこにも慣れなければならず、欧州トップクラブ所属選手たちの負担は大きくなる一方なのだ。 だからといって、E-1選手権のように、Jリーグ組だけで最終予選メンバーを構成するのも難しい。というのも、中東勢中心にレベルが上がり、個々のタレント力ではアジア屈指と言われる日本といえども、勝てる保証はないからだ。 それを選手たちも1~2月のアジアカップ(カタール)で痛感。「(6月シリーズの2連勝で)調子に乗っていると、アジアカップみたいにやられちゃう。その悔しさは自分が痛いほど分かっていますし、自分たちで厳しい声も掛け合っています」と堂安もシリア戦後に語気を強めていた。「アジア枠が8.5枠に広がったから、最終予選は簡単に勝てる」などと楽観視していたら、足元をすくわれる可能性も大いにあるのだ。 そういう状況だから、森保監督も9月以降の選手選考、チーム編成、戦い方の方向性確認には苦慮するに違いない。やるべきなのは、最善の状態のメンバーを招集して、対戦相手を見ながら最適解を見出すこと。イラクのような空中戦で勝負してくる相手との対戦だったら、それこそ3バックを採用して状況に応じて5バック的に引いて固めることもありだろう。4バックというベースはすでにあるのだから、6月シリーズでトライしたことを実際に使えるようにしておくことが肝心だろう。 指揮官は前回最終予選に難しい作業を強いられそうだが、アジアを突破しない限り、2026年W杯優勝という目標に向かうことはできない。久保はシリア戦後に最終予選後のマッチメイクについてJFAに要望していたが、余裕を持ってW杯切符を獲得し、1年後に世界の強豪国と戦う権利を得られるのが望ましい。そうなるように、選手たちにはまず所属クラブでの地位を固め、コンスタントなプレーを見せること。そのために、今オフを最大限有効活用してほしいものである。 [著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
元川悦子 / Etsuko Motokawa