久保だけではない世界に挑むU-20日本代表の逸材
2列目の右サイドを主戦場とするレフティーの18歳の堂安律(ガンバ大阪)には、世界のほうが先に熱い視線を向けた。2015年10月、イギリスの日刊紙『ガーディアン』が組んだ「1988年生まれの将来有望なサッカー界の50人」に日本人で唯一、ガンバ大阪ユース所属だった堂安が名前を連ねた。 これでヨーロッパにおける知名度が増したのか。昨年1月には同じくイギリスの高級紙『デイリー・テレグラフ』が「チェルシーが昨年の武藤嘉紀に続いて、日本人選手に興味を示している」というニュースを掲載。その対象が、高校2年生ながら飛び級でのトップチーム昇格が決まっていた堂安だった。 夏場にはオランダの名門PSVアイントフォーヘンから、期限付き移籍で獲得したいというオファーも実際に届いた。しかし、熟慮した末に堂安は断りを入れている。 同時期にアウクスブルクへ移籍した宇佐美貴史からは、「ガンバに残ったほうがいい」とアドバイスされた。まだ何ひとつガンバで成し遂げていないぞ、という檄だったと堂安は受け止めている。 迎えた今シーズン。4月21日の大宮アルディージャ戦で待望のプロ初ゴールを含めた2発を決めると、ACLのアデレード・ユナイテッド戦、横浜F・マリノス戦と公式戦で3試合連続ゴールをマーク。結果を残したことで余計な気負いも消えたのか。パフォーマンスの変化を堂安自身が感じている。 「行けるかどうか微妙なところで、無理に突っ込まんようになりましたね。球離れも早くなってきたし、そのおかげで不用意なボールロストも減った。攻撃の組み立てに参加することもそうですけど、やはり自分は得点を取りたいという野心をもっているので、そこに力を注いでいきたい」 筋肉の塊のような172センチ、70キロの堂安が右サイドでボールをもち、得意のドリブルで斜めに切れ込んできたときに日本の攻撃のスイッチも入ることになる。 最終ラインを束ねる中山雄太(柏レイソル)は、代表メンバー21人のなかで最も濃密な経験を181センチ、75キロのボディに刻んでいる。昨シーズンの開幕直後から、19歳にしてレギュラーの座をゲット。現時点でJ1出場36試合は、群を抜く数字となっている。 空中戦や球際における対人の強さもさることながら、中山の武器は日本サッカー界でも稀有な「左利きのセンターバック」という点だ。4バックで組む最終ラインの左センターバックで起用し続けてきた理由を、レイソルの下平隆宏監督はこう語る。 「攻撃のビルドアップのところで、かなりスムーズにボールを出せるので。堂々と落ち着いている部分を含めて、年齢に関係なくプレーできている」 日本にとって10年ぶりとなるU‐20ワールドカップの出場権を獲得した、昨秋のAFC・U‐19アジア選手権でも全試合を無失点に封じての初優勝に貢献した。世界と対峙する舞台でも堅守を誓う一方で、中山は得意とする攻撃力にも磨きをかけている。 「まだ代表でゴールがないので…結果や自分の内容次第で今後のサッカー人生が変わると思うので、本当に一日一日を大切にしないといけないと思っています」 チームは3‐2で逆転勝ちした15日のU‐20ホンジュラス代表との親善試合をもって、静岡県内で行ってきた直前合宿を終了。本日17日に韓国へ入り、21日のU‐20南アフリカ代表とのグループリーグ初戦(水原)へ向けて臨戦態勢に入る。 (文責・藤江直人/スポーツライター)