[山口県]新捕鯨母船「関鯨丸」の船内公開 大型でも容易に引き揚げ可能
昨シーズンで引退した「日新丸」に代わる、捕鯨会社の共同船舶(東京)の新たな捕鯨母船「関鯨(かんげい)丸」の船内見学会が3日、接岸している下関市岬之町のふ頭岸壁であった。最新鋭の設備と機能を備えた世界唯一の捕鯨母船の内部が、クジラ業界や行政の関係者ら約130人に公開された。 【写真】船内に広がる上甲板。開いたハッチの下には冷凍設備付きのコンテナ(写真左下)が並んでいる=3日、下関市岬之町そば 市内の旭洋造船で建造が進められ、3月に完成。捕獲したクジラを船内に引き揚げるスリップウエイ方式の揚鯨設備は、斜面の角度を日新丸の時の35度から18度に緩やかにすることで70トン級の大型鯨類でも容易にウインチで引き揚げられるようにした。 船に揚げたクジラは揚鯨設備に直結する船内の上甲板で解体。これまでは屋外で行っていたため衛生管理の高度化が期待される。冷凍設備付きのコンテナ40基を上甲板の下の部分に収めることができ、コンテナごとに温度帯を変えて鯨肉を冷却できることから省エネや肉の品質向上が図れる。一度に最大で600トンの鯨肉を運搬できる計算だ。 コンテナは世界初の船内設置というコンテナクレーンで動かし、上甲板がある空間に直接乗り入れたトラックに積むことができ、陸揚げを効率化したのも特徴。乗組員100人全員分の個室を備え、居住性や労働環境の向上を通して採用面での効果を狙う。船上部にはクジラを探すための大型ドローンのデッキも備えた。 下関を母港とする関鯨丸は総トン数9299トン、全長112・6メートル、幅21メートル。電気推進システムを採用し、出航準備にかかる手間などが省力化できるという。 この日は市内のホテルでパーティーもあり、共同船舶の所英樹社長が「死んだら骨を関鯨丸から海にまいてほしいというくらいの思いで船を造った。負担を乗り越えて黒字化しないと沖合での母船式捕鯨は途絶える。消費拡大への力添えを」とあいさつ。前田晋太郎市長が「クジラの街・下関がいよいよ本格的にスタートする」と述べて乾杯の発声をし、悲願だった捕鯨母船の完成を祝った。 関鯨丸は5月21日に下関港を出港し、東北や北海道の沖合で初となる操業を行う予定。野島茂船長は「新しい船が完成して感激。操縦性能は日新丸よりも優れているので、操業を楽しみにしている。全国の若い人たちにクジラをたくさん食べてほしい」と語った。